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社説・コラム

『潮流』 「ロスタイム」の透明性

■防長本社編集部長 番場真吾

 時間制のスポーツでは、延長はほとんどがルールで決まっている。サッカーのように審判が時間の長さを決めるのは少数派だろう。負傷者の手当てなどで試合が中断した時間で判断される「ロスタイム」だ。それでも観戦者は中断の状況などを見ており、審判も恣意(しい)的にはできない。

 決められた時間の延長に公正さが求められるのは、スポーツに限らない。権限を持つ行政ではなおさらだ。しかし延長が当事者間の密室のやりとりで決まる場合、市民の信頼を得られるだろうか。

 上関原発建設予定地の公有水面埋め立て免許の延長手続きは、中国電力の申請から5日でちょうど4カ月。受理した山口県の内規では、事務処理期間のめどは32日以内とされている。

 書類に不明な点があると、県は中電に補足説明を求める。その際、回答が返るまでは内規の事務処理の時間にカウントしない。県は先日、4回目の質問を発送し、またも「時計」は止まった。いわば「ロスタイム」が繰り返されている。

 中電は津波対策として地盤高のかさ上げなど設計変更も申請している。審査に時間がかかり、ただすべき点も多々あろう。しかし内容について外部への説明はないままだ。

 そのため「引き延ばしが狙いでは」との批判が出るのは無理もない。手続きする県港湾課は「適正に審査している」と繰り返すが。

 福島原発事故で国会事故調査委員会は、規制当局と東京電力の「なれ合い」を強く批判した。原子力規制委員会は議事録をすべてインターネットで公開している。田中俊一委員長は「地に落ちた信頼を回復」するため、真っ先に掲げたのは「透明性の確保」だ。

 原発災害は今なお続いている。稼働中の原発もある。原発に関係する機関すべてで、信頼回復への努力が求められているのでは。

(2013年2月5日朝刊掲載)

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