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社説・コラム

天風録 「三舎を避く」

 三舎を避(さ)く。先日、北京で故事に由来する言葉に接した。「舎」は古代の軍隊が1日に進んだ距離12キロ。3日分退いて、相手に一目置く意味だ。「先に争いは起こさない」などの言と併せ、この国の外交の礎らしい▲中国海軍の艦船が尖閣諸島の近海で、日本の護衛艦にレーダーで狙いを定めた。あとボタン一つで交戦という愚かしい挑発。しかも3キロに接近していたのだから、数字の上でも「三舎」に大きくもとる。言行不一致も甚だしい▲近い国なのに、腹の内が読めない。まるでスモッグで五里霧中の首都にも似て。空は汚染物質PM2・5に満ちてか、昼夜問わず、どんよりかすむ。海を渡り、日本を覆ってしまいかねない。何ともはた迷惑な「隣人」だ▲もう幾つ寝ると旧正月の中国。春節くらいはおとなしかろうと思いきや、さにあらず。祝いの花火や爆竹の商品名に驚いた。「東京大爆発」「空母で国威を発揚せよ」。大気汚染を防ぐためにも自粛して、心穏やかな年越しはいかが▲善く士たる者は武ならず―。老子にそうある。優れた将は強がった行動をとらないこと。こちらも先人の金言だろう。大国を自任するなら、しっかり肝に銘じてはどうか。

(2013年2月7日朝刊掲載)

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