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社説・コラム

天風録 「3代目の乱心」

 売り家と唐様で書く三代目―。苦労知らずの若旦那を江戸川柳が皮肉る。相続した家は道楽に消え、破産を告げるしゃれた字も苦笑を誘う。そういえば今の時世にも、カジノに入れ揚げた製紙会社の創業者の孫がいた▲3代続く世襲で権力を握った若き指導者には、皮肉も怒りも届かないのか。北朝鮮の金正恩(キムジョンウン)第1書記のこと。国際社会の制止をよそに3回目の核実験という蛮行に及んだ。軒を接し、後ろ盾だった「大店(おおだな)」中国は何をしていたのだろう▲瀬戸際外交を改めるかもしれない。1年ほど前にはわずかな期待もあった。ところが軍服のたいこ持ちが周りでおだて、はやしたてるようだ。ミサイルを打ち上げた揚げ句の大ばくち。のめり込むには危険すぎる▲「強力な国家的重大措置」とぶち上げ、対話の機会を自ら閉ざした。数日後に迫った先代の誕生日は祝えても、失うものは大きかろう。自分の身を危うくするのは勝手だが、飢える国民は救われない▲いいかげんに目を覚まし、人々の声に耳を傾けては。妻が身重とも伝わる。生まれくる子に恥ずかしくないのか。聞く耳は持たぬだろうが、あえて1句を進ぜよう。核放棄を世界に誓え三代目―。

(2013年2月13日朝刊掲載)

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