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社説・コラム

社説 北朝鮮の核実験 この愚行 断じて許せぬ

 国際社会から孤立を深めるばかりなのに、いったい何を得ようというのか。

 北朝鮮がきのう、地下核実験を行った。断じて許されぬ暴挙というほかない。

 昨年12月に人工衛星と称してミサイル発射実験を強行し、国連安全保障理事会が制裁強化決議を採択した。これに反発し、さらなる挑発に出た格好だ。

 安倍晋三首相は「わが国の安全に対する重大な脅威だ」と強く非難した。韓国やロシアが同調し、オバマ米大統領も「地域の安定を損なう極めて挑発的な行為だ」との声明を発表した。当然であろう。被爆地広島からも憤りの声が上がった。

 北朝鮮の核実験はこれで3回目だ。今回、最も懸念されたのは、核弾頭を小型化する技術が一気に進むことだった。

 昨年のミサイル発射実験により、約1万キロ離れた米国本土や欧州を射程に収める懸念が現実味を増している。小型の弾頭ならこれに搭載できる。

 朝鮮中央通信は「小型化、軽量化し完璧に実行した」とも発表している。はったりであることを願うばかりだが、過去の実験に比べて威力は増したとも伝えられる。

 国際社会にとって、核開発の阻止はますます喫緊の課題となったといえよう。

 それにしても理解に苦しむ。自らを孤立へと追いやる金正恩(キムジョンウン)体制の瀬戸際外交である。

 核へのこだわりは「核保有国」として米国と対等な交渉をする意図とされる。現体制を保障してもらいたいのだろう。

 認識の錯誤もはなはだしい。あの惨劇に見舞われたヒロシマ、ナガサキならずとも、「核兵器を持てば国際社会に認められる」という為政者の発想こそが断じて容認できない。

 核開発を故金正日(キムジョンイル)総書記の「遺訓」と受け継ぎ、国内の体制固めのため軍部の掌握を急いでいるとの指摘もある。若く未熟な指導者が核を求心力の道具とするのは危険極まりない。

 慢性的な食糧難にあえぐ国内事情を分かっていないはずはなかろう。国民の不満を募らせることが、なぜ体制固めなのか。

 核拡散防止条約(NPT)に復帰し、6カ国協議などを通じて核兵器を放棄することでしか将来は開けない―。そうした単純な道理を北朝鮮に痛感させなければならない。

 そのためにも外交努力による平和解決を目指すべきだ。武力衝突は何としても避けたい。

 国連安保理の制裁決議により、これまでも北朝鮮の団体や個人の資産が凍結され、渡航は禁止されてきた。日本も独自の制裁措置を発動している。

 ここに至れば、さらなる厳しい制裁もやむを得まい。ただ、その実効性は国際社会の足並みにかかっている。とりわけ北朝鮮に影響力を持つ中国の姿勢が鍵を握るだろう。

 中国は先月の国連安保理決議に賛成し、きのうも「断固たる反対」と表明した。その言葉が幻とならないよう北朝鮮を粘り強く説得すべきだ。「中国は一緒になって米国に圧力をかけるつもりでは」との疑念を周辺に抱かせないよう、毅然(きぜん)とした態度を見せてもらいたい。

 尖閣諸島をめぐり日本と中国は依然しっくりしない。とはいえ、ここは非常時である。一致した対応が求められよう。

(2013年2月13日朝刊掲載)

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