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社説・コラム

社説 一般教書演説 真価問われる協調外交

 オバマ米大統領が2期目に何を目指すのか。一般教書演説からはっきり見えてきた。

 演説の大半は経済再生をはじめとする国内問題に充てた。協調外交を掲げて国際社会の評価を得た1期目と比べ、内政重視が強まったことが読み取れる。

 核実験を強行した北朝鮮には「世界を率い、断固たる行動を取る」と警告したものの、外交政策全体は物足りなさが残る。

 いま世界情勢は再び混迷の度合いを深めている。オバマ外交の真価が問われるのは、まさにこれからのはずだ。

 教書演説は1月の就任演説で打ち出した方向性を、具体的に肉付けしたものだ。

 キーワードは「中間層を再び元気に」だろう。経済成長のエンジンに中間所得者を位置付け、雇用や賃金の確保を最優先する。その手だてとして再生エネルギー推進などのほか、環太平洋連携協定(TPP)交渉の締結を掲げた点が目を引く。

 日本を含む国々を自由貿易圏に巻き込んで自国の成長につなげる戦略が、あらためて鮮明になったといえる。

 国民の支持ありと踏んだのだろう。銃規制や移民受け入れ拡大などリベラル色の濃い政策を強気で打ち出したのも特徴だ。

 だが昨年末の「財政の崖」問題に続き、野党共和党の壁が立ちふさがるのは間違いない。

 当面の焦点は、財政再建である。演説では3月にも予定される強制的な歳出削減の先送りを提案し、景気対策との両立を唱えた。これに対し、大幅な財政赤字削減を求めてきた野党側が歩み寄る保証はない。

 事の次第は世界経済にも響く。対立を乗り越え、妥協点を見いだしてもらいたい。

 心配なのは、内向きの課題ばかりに政権の労力が割かれ、外交面が後回しになることだ。

 そもそもオバマ政権が内政重視に切り替えた背景には、外交で成果を挙げたとの自負があるようだ。確かに米国を疲弊させたイラク戦争は終結させ、アフガニスタン戦争も2014年末までに終わらせると決めた。

 しかし「核兵器なき世界」を掲げたのは大統領自身であることを忘れないでほしい。北朝鮮の核実験により世界の核状況はさらに悪化した。イランの核開発問題も解決は遠い。今こそ最大の核保有国が率先して核兵器廃絶に動くときだ。

 演説では、ロシアとの交渉で追加の核弾頭削減を目指すと表明したが不十分だ。北朝鮮を厳しく非難する以上、包括的核実験禁止条約(CTBT)を米国が批准し、臨界前核実験も中止する姿勢が欠かせない。

 経済、軍事面で台頭し、尖閣問題をはじめ強硬姿勢を貫く中国への対応も問われる。ところが今回は言及しなかった。新任のケリー国務長官は中国重視派とされる。あえて物言わぬことで配慮を示した、との見方ができなくもない。

 日本はどう向き合うべきか。安倍政権には日米同盟を強化し、米国の軍事力で中国をけん制したい意図がある。いずれ対中姿勢の温度差が表面化する可能性もあろう。その一方、TPP交渉への参加を求める米側の圧力は一段と強まりそうだ。

 今月下旬には日米首脳会談がある。オバマ政権2期目の意味を踏まえた主体的な外交戦略が日本に求められよう。

(2013年2月14日朝刊掲載)

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