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社説・コラム

社説 きょう竹島の日 粘り強い発信の契機に

 島根県が制定した「竹島の日」がことしで8回目を迎えた。県主催の式典がきょう、松江市内である。安倍政権は政務官を派遣する。政務三役の出席は初めてである。

 日本の固有の領土であるにもかかわらず、韓国は竹島の実効支配を続ける。昨年8月、李明博(イ・ミョンバク)大統領が上陸を強行したことから日本は強く抗議した。両国間にしこりが残る中での式典となる。

 昨年来、世論の注目が高まっている感もある。県民の思いを国内外でさらに発信するとともに、政府に冷静かつ粘り強い外交対応を促す契機としたい。

 政府が竹島を島根県に編入したのは1905年2月22日。1世紀を経て県条例で定めたのが「竹島の日」である。外交交渉の主体ではない自治体が踏み込んだ背景には、日本政府の消極姿勢に対するいらだちがある。

 占領下にあった日本が主権を回復したサンフランシスコ講和条約は51年9月、調印された。日本が放棄する領土に竹島は含まれなかった。

 ところが条約発効の直前、韓国の李承晩(イ・スンマン)大統領は朝鮮半島周辺の公海上に「李承晩ライン」を一方的に引いた。漁場を囲い込み、日本の漁船を締め出した。ラインの内側にあった竹島の実効支配も強めていった。

 日韓は、65年に国交正常化した際に領土問題を棚上げした。現在は協定に基づき、竹島周辺を「暫定水域」として共同管理している。

 だが韓国漁船は好漁場を事実上独占し、乱獲を繰り返してきた。日本の排他的経済水域(EEZ)内でズワイガニなどを捕る違法操業も後を絶たない。山陰の漁民が不満を募らせているのも当然である。

 地元は県民に対する竹島問題の啓発活動などに力を注いできた。これに対し、政府が熱心に外交発信をしてきたとはいえない。

 自民党は昨年の衆院選で、式典を政府主催にすると政権公約に盛り込んだ。大統領の竹島上陸が、日本政府を強い姿勢に転じさせた形である。

 島根県は今回、式典に首相の出席を求めていた。安倍政権が政務官の派遣にとどめたのは、地元感情をくみながら韓国への配慮も表そうとしたのだとみられる。

 ただ韓国側は強く反発している。外交通商省の報道官はきのう、「安倍政権が高官を出席させれば対抗措置を取る」と記者会見で述べた。もはや一地域の行事だと静観するわけにはいかない、という理屈だろう。

 大統領就任を来週に控えた朴槿恵(パク・クネ)氏の出はなをくじいた、とも誤解されかねない。安倍政権は自らの意図を丁寧に説明すると同時に、韓国側の抑制的な対応を求めるべきである。

 領土問題は、ともすれば国民感情を過熱させがちだ。

 島根県が竹島の日を制定した直後、韓国側が自治体間交流などを軒並み断ってきたことは記憶に新しい。竹島編入を日本の植民地支配と同一線上に捉える韓国との間に、認識の隔たりは大きい。

 それでも、あらゆるレベルで外交発信と対話を続ける中でしか解決策は見いだせない。民間交流の地道な積み重ねが、ますます重要になってくることは言うまでもない。

(2013年2月22日朝刊掲載)

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