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社説・コラム

スマートコミュニティー目指す工業団地 長府扇町安全協議会 磯部副会長に聞く

省エネで連携 経費削減

ごみ燃料化や排熱融通

 下関市の長府扇町工業団地(146ヘクタール)で、団地内の113社が協力してエネルギーを効率的に利用する「スマートコミュニティー」を目指す取り組みが昨年末に始まった。100社超が集う試みは全国的にも例がないという。実施主体の長府扇町安全協議会の磯部昌毅副会長(磯部鉄工専務)に意図やメリットを尋ねた。(山田英和)

 ―取り組みのきっかけは何ですか。
 県の提案で団地内を調査したところ、未活用のエネルギーがかなりあり、捨てる側ともらう側を結びつけて有効活用できる可能性が見えてきた。再生可能エネルギーを導入した企業も多かった。二酸化炭素の排出削減が求められたことも背景にあり、排出量が多いということは、エネルギー費用も多く払っていることになる。経費削減につながるエコ、省エネを進めていこうと一致した。

  ―どんなメリットがあるのですか。
 建築廃材や食品廃棄物など処理費を払って捨てているごみや、大気中に放出している排熱を企業間で融通すれば無駄にならない。例えば熱を水の加熱に利用したり、食品の残りかすをバイオマス発電の原料にしたりする。ごみは減り、エネルギーが生まれる。もらう側は費用を削減でき、提供側は払っていた金をもらえる立場になる。電力は必要量をスマートグリッド(次世代送電網)で管理して「見える化」する。エネルギー消費を平準化してピーク抑制をすると、電力会社の負荷が減ってコスト低減につながる。電気代も安くなるだろう。団地全体で取り組めば取り組むほどメリットになる。

  ―協力して取り組む前提となる環境が団地にあったのですか。
 団地内の製品を市民にPRするフェスタを10回開いた。開催に向けた準備や安全防犯、美化活動を通じ、日頃からコミュニケーションが活発で風通しのよい土壌があった。メーカーやサービス業など業種のバラエティーを生かして機動的に動ける。それがわれわれ団地の財産だ。

  ―今後の見通しは。
 大学や行政、企業でつくる推進検討委員会を設置して調査を進めている。実現には5~10年かかるだろう。継続には採算性、安定性が必須。初期投資が大きいとハードルが下げられないので、利用できる国の補助金などはフルに使いたい。ただ、補助金頼りにはせず、損益を考えて投資が回収できるものは自前でやる。全国のモデルとなる工業団地にしたい。

(2013年2月25日朝刊掲載)

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