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社説・コラム

社説 電気料金値上げ 最大限抑制する努力を

 全国で電気料金を値上げする動きが広がっている。大半の原発の停止が続く中、各電力会社とも火力発電の割合が高まり、燃料費が増えているためだ。

 電気料金は直近の燃料価格に連動する制度があり、毎月、小幅に変わる。いま電力会社が値上げを計画しているのは、基本となる料金だ。各社の値上げ幅は家庭向けが1割前後、企業向けは最大2割近くに上る。

 もともと原発の比率が低い中国電力は当面、値上げはしない方針のようだ。ただ今後には含みを持たせている。

 各電力会社は値上げに踏み切る場合でも、上げ幅を最大限抑制する努力を重ねてほしい。

 電力会社が独占する家庭向けの料金を値上げする際は、国に申請して審査を受ける必要がある。全国の10社中、東京電力が昨年9月から値上げした。関西と九州がことし4月、東北と四国が7月からの値上げを申請し、北海道も検討している。

 電力会社は早期の原発再稼働を期待しているが、現実には難しかろう。原子力規制委員会が原発の新安全基準の骨子案をまとめたばかりだ。停止中の原発が新基準を満たさなければ、再稼働の是非は議論できない。

 まず電力会社が取り組まなければならないのは火力発電の燃料費の抑制だろう。燃料費などの原価に利益を上乗せして料金を決める総括原価方式が電気事業法で認められているため、国際的に高い価格で燃料を調達してきたとの批判は強い。

 東電は2017年から、米国で開発が進むシェールガスを原料とした割安な液化天然ガス(LNG)を調達するという。各電力会社はこうした動きをもっと強めてもらいたい。

 燃料費の削減に加え、二酸化炭素の排出抑制にも気を配る必要がある。複数のタービンを組み合わせて火力発電の効率を高める設備などの導入も求められよう。

 料金値上げで消費者や企業に負担を求めるからには、電力会社自らも身を切る姿勢は欠かせまい。役員報酬や社員給与の見直し、福利厚生施設の廃止などはやむを得ないだろう。

 経済産業省の専門委員会は現在、各電力会社の値上げ申請を審査している。燃料費や人件費の引き下げがまだ可能であるとして値上げ幅の圧縮を求める見通しだ。国は電力会社の努力が十分か、しっかりチェックしなければならない。

 将来にわたり電気料金を適正化するには、家庭向け電力の自由化は不可欠だ。特に料金が値上げされる地域の住民は、電力会社を選べない不満が強い。

 電気を安定供給する仕組みは必要だが、電力事業者同士が競争し、切磋琢磨(せっさたくま)するのがあるべき姿ではないか。家庭の節電にもつながる多彩な料金メニューも生まれよう。

 経産省の専門委は今月、16年をめどに家庭向け電力を自由化すべきだとの報告書をまとめた。さらに新規の発電事業者が参入しやすいよう電力会社の発電部門と送電部門を分離する「発送電分離」を5~7年後に実施すると盛り込んだ。

 電力改革については安倍政権も民主党政権の方針を引き継いでいるようだ。電気事業法の改正案を今国会に提出するという。改革は着実に進めなければならない。

(2013年2月28日朝刊掲載)

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