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社説・コラム

中国新聞 政経講演会 安倍政権の課題と日本政治の行方 伊藤惇夫氏

参院選経て長期安定へ

 中国新聞社と中国経済クラブ(高橋正理事長)は27日、広島市中区の中国新聞ビルで中国新聞政経講演会を開いた。政治アナリストの伊藤惇夫氏が「安倍政権の課題と日本政治の行方」をテーマに話し、今夏の参院選を経て安倍晋三首相が長期安定政権をつくる可能性が高いと展望した。要旨は次の通り。(村田拓也)

 安倍政権は発足から3カ月目に入ったが、順調だ。2度目の首相就任で、前回の失敗から学んだ。憲法改正や自衛隊の国防軍化など、安倍首相の理想や哲学を封印し、経済・景気対策に集中している。公共事業を柱にした補正予算を成立させる実績も挙げた。ただ、円安や株価の上昇は、期待値が先行している。今の時点での評価は難しい面もある。

 外交では、参院選前につまずくことはなさそうだ。安倍首相の基本方針は「民主党政権でがたがたになった日米関係を、もう一度強固にする」。環太平洋連携協定(TPP)をどう扱うかが重要だったが、日米首脳会談で共同声明を出すなど予想以上にうまくいった。

 当面の課題は、参院選での「ねじれ国会」の解消。自民党選対幹部が先日、戦略を分かりやすく説明してくれた。ねじれ解消には、自民、公明両党が改選の44議席に20議席を上積む必要がある。公明党は10議席程度を獲得するだろうから、自民党の目標は54議席だ。

 全国16の複数区では候補者を1人に絞り込むことなどで、16議席を取れる。比例は15~16議席。すると31の1人区で23勝以上すればいい。民主党がぼろぼろで、日本維新の会やみんなの党など第三極と票を食い合うので勝てる―とみている。

 ねじれ解消は、極めて高い確率で実現するだろう。そうなれば長期安定政権に入る。日本の政治が安定するのは良いことだが、理想や哲学の世界に走らないかが心配だ。参院選後も、経済・景気対策に全力で集中してもらわないと困る。

 民主党には健全野党として復活してほしいが、現状では難しい。後援会や地方議員という根っこがしっかりしている自民党と本質が違う。民主党議員の大半は、選挙の時の風向きや人気に左右される。昨年末の衆院選では、根っこがなく吹き飛ばされてしまった。

 民主党は参院選で第三極や生活の党との協力を模索するが、民主党の最高実力者である輿石東参院議員会長は日教組の親玉。第三極は組めない。生活の党の小沢一郎代表は民主党の取り込みを考えているが、そうなれば民主党は割れる。野党の足並みはそろわず、自民党の思い通りの展開になるのではないか。

いとう・あつお
 自民党本部勤務などを経て1998年に民主党事務局長に就任。2001年に退任した。64歳。

(2013年2月28日朝刊掲載)

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