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社説・コラム

社説 F35部品の輸出 「三原則」自ら壊すのか

 わが国の武器輸出三原則は本来、全面禁輸だった。そこに次々と例外を増やしていく。ここまでくれば、もはや骨抜き同然と言わざるを得ない。

 最新鋭のステルス戦闘機F35向けの部品を日本企業が製造・輸出することについて、政府は武器輸出三原則の例外扱いにすると決めた。

 例外だと取り繕えば済む話ではあるまい。たとえ部品であれ紛争に使われる可能性を考えれば、「国際紛争の助長を回避する」という三原則の基本理念からは逸脱するからだ。

 F35は米国が中心になって開発中のハイテク機種。レーダーをかいくぐるステルス性能を備え、敵地の奥深くへも攻め込む。「専守防衛」にはそぐわないはずだが、日本も次期主力戦闘機として42機を導入する。

 導入国が部品を融通し合う仕組みに今回、日本も加わる格好だ。おととい菅義偉官房長官が、これを三原則の例外扱いにする、との談話を発表した。

 その談話にもあるように「わが国の防衛生産や技術基盤の維持・育成、高度化に資する」という面はあるのかもしれない。高度な技術と多額の開発・製造費を要する戦闘機は国際分業の時代に入っている。そこに加わり、自国の産業界の国際競争力を磨こうというのだろう。

 とはいえ、紛争の助長を回避するとの文言が談話に盛り込まれなかった点は、どう考えても納得できない。

 イスラエルがF35を導入すると見越したに違いない。日本製の部品が使われた機体がパレスチナやイランなどへの攻撃に使用されれば、攻撃を受けた国にとどまらず、世界は日本が手を貸したと見なすであろう。

 そうした批判を意識してか、日本製の部品は米国が厳しく管理する。その移転、つまり他国への供与について談話は「国連憲章の目的と原則に従うF35の導入国に限定される」とした。

 とどのつまり、部品の管理は米国任せであり、イスラエルも国連憲章を順守する限りは日本製の部品が使われたF35を導入できる、という意味のようだ。

 問題は、日本が管理にどう関わるか明確ではないこと。しかも国家間での武力による威嚇や行使を戒める国連憲章を忠実に守るならば、F35という強力な戦闘機はそもそも、どんな国であれ導入できないはずだ。

 談話が「国内に整備基盤を置くことで米軍への支援も可能になる」とした点も気になる。F35の部品交換や整備を日本企業が請け負うことになれば、やはり国際社会は戦闘行為への支援強化と受け止めよう。

 武器輸出三原則をめぐっては例外扱いを拡大する方向で見直しが続く。おととしは民主党政権が国際共同開発や生産への参加、人道目的での装備品供与など大幅な緩和に踏み切った。ただその時の官房長官談話には、紛争の助長回避、との文言が盛り込まれている。

 今回の談話には「平和国家の基本理念を維持する」というくだりはある。ところが、どう維持していくかの具体策はなく、むなしく響くばかりだ。

 平和憲法と非核三原則、それに武器輸出三原則は平和国家日本のよりどころであり、屋台骨である。自ら変節を重ねるばかりでは、国際社会の信頼はますます遠のいてしまう。

(2013年3月3日朝刊掲載)

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