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社説・コラム

天風録 「本土」って?

 本土とは? 手元の辞書を繰った。地域は離れるが政治・経済で依存し、つながりを持つ主要な国土とある。「初の本土訓練」といった本紙の見出しは、この意味で使ってきた▲そのオスプレイが四国上空での飛行を終え、きのう岩国から沖縄本島の普天間へと戻った。本土とは小さな離島を除いた国土という意味もあり、かの地も含まれる。あの見出しはひょっとして、沖縄が本土ではないとの誤解を招いただろうか▲沖縄返還のうたい文句を思い出す。「核抜き本土並み」。米軍に核を撤去させ、沖縄も日米安保条約の適用を受ける意味だった。ただそこには、基地負担や暮らしを本土並みに、という地元の願いもこもっていた▲負担は偏ったまま、県民の思いは今も晴れない。機影を今回見た人たちは、沖縄の日常に思いをはせたことだろう。それでも後味の悪さが残る。国土のどこかの上空で訓練は当分続くから▲普天間の県内移設にこだわる首相に確認したくなる。沖縄本島は本土の一部ですよね。とすれば日本の主権回復を記念する政府式典は、返還の日こそふさわしい? いやオスプレイが飛び回る限り、どこを本土と呼ぼうが主権はないのかも。

(2013年3月9日朝刊掲載)

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