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社説・コラム

社説 災害への備え 教訓 地域で根付くには 

 2年前のきょう、巨大な地震と津波が東日本の太平洋岸を襲った。災害列島では決して人ごとではない。誰しも痛感した。

 被災地で起きたことを常に思い返し、わがことに置き換える。身近な備えを点検する。大震災から教訓を引き出し、命を貴ぶ姿勢につなげよう。

 何も、強固なインフラの有無に限った問題ではない。そびえるように立つ防潮堤ではなく、素早い避難が生死を分けたケースも多々あった。

 岩手県釜石市では震災直後、学校にいた児童・生徒がすぐさま避難場所へ逃げたという。津波が迫るとさらに上へ移動し、ほぼ全員が助かった。防災教育の積み重ねにより、自らの判断で行動する習慣ができていた。

 釜石の教訓を全国で生かす試みが広がっている。国の方針を受け、広島県など全国の県教委は公立学校での防災教育を拡充する。地元の過去の災害について学び、避難の仕方を継続的に身につけていくという。

 災害時は想定外の事態が多々起こる。柔軟に状況を判断し、行動に移せる「自助」の力を育むことに結び付けたい。

 中国地方は度重なる豪雨災害に見舞われてきた。阪神大震災を機に、活断層と直下型地震のリスクも注目された。昨年公表された南海トラフ巨大地震の被害想定は、瀬戸内沿岸でも津波に注意するよう促した。

 想定すべき災害は幅広くなっている。それでもなお、東北のような事態は起きないと考えている人は少なくない。防災教育の成果が家庭や地域でも共有されていくべきだろう。

 東日本大震災では高齢者や障害者の「安心・安全」を確保する困難さが浮き彫りとなった。災害弱者と呼ばれる人たちだ。

 介護を必要とするお年寄りを災害時にどう支えるか。昨年秋、広島市内でこの問いに答えようという机上訓練があった。介護支援専門員や居宅介護支援事業所の関係者たちが、シミュレーションを試みた。

 道路や通信インフラが寸断された中、どう安否確認するか。避難所での生活支援は―。訓練を続ける必要性はもちろんのこと、関係者間の横の連携、地域住民の協力を得る大切さも再確認したという。

 人と人の「普段つながり」。それが「共助」の力を高めるということだろう。防災への備えは平時からの地域づくりでもある。震災後、住民で支え合う自主防災組織などもあらためて注目されている。幾重もの普段つながりから、セーフティーネットをつくりたい。

 福島第1原発事故は、原子力災害の想定と備えがあまりにお粗末だったことに猛省を促した。避難は広域、遠距離に及び、対象人口も多い。困難を極めることは避けられない。中国地方も人ごとではない。

 島根原発の事故に備え、島根県などは1月に防災訓練を実施した。参加は約780人。過去最多とはいえ原発30キロ圏内の人口46万人のほんの一部である。避難計画の実効性が今後の課題であることは言うまでもない。

 原子力規制委員会が示した指針は、原発再稼働の前提として避難対策の充実などを挙げる。住民の安全が確保できるものなのか、常に見直す姿勢が必要だろう。災害を侮らない。人命第一。震災の教訓を貫きたい。

(2013年3月11日朝刊掲載)

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