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社説・コラム

社説 被災地支援 身近で今できることは

 この2年間、中国地方からもボランティアや専門家が震災の被災地に入り、復旧や復興を支援してきた。被災者たちを勇気づけたに違いない。

 時がたつにつれ、ボランティアが減少しているという。震災への関心が薄れていることだけが理由ではあるまい。資金が底を突き、やむを得ず活動を中止した団体もあると思われる。

 震災から2年のきのう、安倍晋三首相は会見で「一人一人が東北の復興のため、できることに力を尽くしていこう」と国民に呼び掛けた。

 復興への道のりはまだ遠いと言わざるを得ない。被災者が抱える大きな不安は震災が忘れ去られることだろう。身近な支援を通じて、忘れてはいないと伝えたい。

 安倍政権が発足後、復興予算を増額したが、多くの被災者にとって生活の再建にはほど遠いだろう。農地の再生や心のケアは思うように進んでおらず、ボランティアが必要な状況は変わっていないといえる。

 被災地を支援してきた広島県内のボランティア団体はきのう合同で追悼の集いを催した。今も地道な活動を継続する団体は少なくない。

 広島修道大の学生グループは昨夏、仙台市に入り、津波の被害を受けた畑からがれきを取り除いたり仮設住宅を訪問したりした。ことしの夏も企画するという。こうした団体には息の長い取り組みを期待したい。

 現地で仕事を手伝うのは難しいという人も多いかもしれない。そうであれば東北への観光旅行も支援になるだろう。

 震災後、大きく落ち込んだ東北の宿泊者数は全国平均に比べて回復のペースが遅い。被災地の観光産業が活性化すれば、復興への歩みも早まる。中国地方の学校が修学旅行先に東北を選ぶ方法もあろう。

 ただし中国地方から東北への距離を考えれば、何度も訪れるのは簡単ではない。復興増税は別として、日常の中で主体性を持って被災地のために何ができるだろうか。

 一つは東北で作られた農作物や製品を購入することだ。被災地の農家や企業が立ち直るのを助けられる。復興には地域の産業の再生が欠かせない。

 心の面でも被災地の人たちに寄り添えるだろう。広島市内の大学や老人クラブが現地の小学生や仮設住宅のお年寄りに手紙を書く取り組みを始めている。こうした試みはもっと広げていきたい。

 被災地から中国地方に避難している人たちへの心配りも復興支援といえよう。約2千人が暮らしている。被災者に公営住宅を無償で提供する期間は最長2年としている自治体もある。入居者が困らないようできるだけ柔軟に対応するべきだ。

 避難してきた母親同士が交流しやすいよう、子どもを預かるボランティア団体もある。新たな生活に向けて踏み出せるよう支えたい。

 専門家による被爆地ならではの支援も続いている。原発事故が起きた福島県には、広島大の医師や看護師らが派遣され、県民の健康管理調査などを手助けしている。

 被爆地として被災地のために何ができるのか。医療支援に限らず、民間レベルでの幅広い支援を考えていきたい。

(2013年3月12日朝刊掲載)

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