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社説・コラム

『潮流』 山口発ヒロシマ学習

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 宮崎智三

 招致が決まった瞬間、駆け付けた関係者の間で歓声が上がったという。2015年の「世界スカウトジャンボリー」の開催地を決める国際会議が5年前、韓国であった。投票で選ばれた山口市は、予想では不利とされていただけに、感激もひとしおだったそうだ。

 聞き慣れない「スカウトジャンボリー」は、ボーイスカウトの世界大会といえば、イメージしやすいだろうか。女性を含む14~17歳の若者が、世界161カ国・地域から2万4千人参加する。大人も含めると総勢3万人。国内開催は44年ぶりという一大イベントであり、地元で関心が高まっているのは当然だろう。

 しかも、広島にも大いに関わりがある。山口開催が決まった背景の一つには、被爆地広島の存在があったからだ。

 原爆資料館の見学をはじめ平和学習を日程に盛り込んだ結果、国内外で山口開催の「魅力」への評価が高まり、逆転劇につながった。あらためてヒロシマという重みを感じさせる。

 ただ、運営は大変だろう。喜んでばかりいられない。山口市から往復5時間かけて連日4千人の子どもを運ぶ。バス100台を駆使する山口発の日帰りヒロシマ学習が6日間も続く。

 海外から参加する人は1万8千人もいる。昨年度の原爆資料館の海外入館者の2割近い人数。しかも全員が若い世代である。

 日々の仕事で、20人ほどのジュニアライターと接している。被爆証言を聞く取材や若者のフェスタを企画する姿を見て、前向きさや感受性の豊かさ、発想の柔軟さに感心させられる。

 ジャンボリーの日帰り学習は広島市民も加わり、若者たちにヒロシマの思いを伝えるチャンスだ。被爆70年の年でもある。

 今夏には、プレ大会が山口市で開かれる。規模は小さいが、まずはそこから盛り上がればと願う。

(2013年3月21日朝刊掲載)

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