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社説・コラム

天風録 「あの素晴しい愛をもう一度」

 悪いのは自分じゃないもん―。穏やかに叱るつもりが、口ごたえにヒートアップする。親なら心当たりがあろう。時に子どもから「大人だって」と切り返される。おととい都内で大反省会を開いた民主党は果たして大人か子どもか▲原発事故への対応や米軍基地をめぐる失政を、菅直人元首相らが省みた。なのに「政策判断は間違っていない」「でも官僚が…」と弁解を連ねる。集まった若者らが「言い訳大会か」とあきれたのも無理はない▲菅氏らの胸に去来するのは、あの頃に戻れたらとの思いだろうか。一方で離党者には容赦ない批判も。その当てつけでもあるまいが、安倍晋三首相は同じ日に「あの素晴(すばら)しい愛をもう一度」を熱唱した。「心と心が今はもうかよわない」と▲絶対に歌っちゃダメという妻の言いつけを破り、南こうせつさんの公演でステージへ。アベノミクスが順調だし支持率も高いから、一曲披露したくなったんだ。そんな言い訳が聞こえてきそう▲首相はこの日、映画「リンカーン」も観賞した。奴隷制の廃止に向け米憲法修正を目指した大統領の姿に、憲法改正を掲げる自らを重ねたのかもしれない。さて国民と、心と心は通っている?

(2013年5月13日朝刊掲載)

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