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社説・コラム

社説 敦賀原発の行方 「廃炉ルール」作る時だ

 原子力規制委員会がおととい、福井県敦賀市の敦賀原発2号機直下の「破砕帯」を活断層と断定した。国の指針では活断層の上に原子炉建屋を設置することは認められない。

 この破砕帯が過去、近くの断層と連動して動いた可能性があることが、旧原子力安全・保安院の調査で判明したのはわずか1年前のことだ。規制委の島崎邦彦委員長代理は今回、「これまで何の事故もなかったのは幸いと思うしかない」と述べた。福島原発事故を受けて全原発を総点検していなければと思うと、空恐ろしくなる。

 規制委の報告により、停止している敦賀2号機の存続は極めて危うくなり、再稼働どころか廃炉も避けられまい。規制委は国家行政組織法に基づいて設置される行政委員会で内閣からの独立性が高く、決定は重い。

 ただ、規制委に廃炉を命じる権限はないため、今後は運営する日本原子力発電(原電)の判断を待つことになろう。

 原電の浜田康男社長は「議事運営が不公平」「結論ありきの個人的運営だ」と規制委の手法に反発しているが、活断層だとする結論が覆る可能性は低い。安全性の面で原発の廃炉が検討される初めてのケースになるだろう。

 原電は沖縄電力を除く電力9社などの出資を受け、原子力発電だけで電力を卸販売している。関西電力などと受電契約を結び、受電ゼロでも電力会社は原電に「基本料金」を支払う。一部の電力会社は原電の借り入れの債務保証もしており、まさに一心同体といえよう。

 「廃炉ルール」のモデルとなるよう、電力業界挙げて問題に取り組むべきではないか。

 しかし敦賀1号機は40年の運転期間の上限を超え、東海第2原発(茨城県東海村)は被災して地元自治体は再稼働に反対している。敦賀3、4号機の増設も難しく、2号機が動かなければ原電の経営は立ちゆかない。

 原電を支える電力会社のコストもかさみ、自社の電気料金の値上がりにつながりかねない。それでなくても、各社とも火力発電燃料コストの上昇で経営は苦しいはずだ。

 将来見通しが不透明な原電を支え続けることに対し、地域の消費者や株主、社員の理解は得られるのだろうか。

 また、敦賀原発の地元にしても、「休炉」のような状態では雇用に大きく影響しよう。稼働しなくても使用済み核燃料は、たまったままだ。現状を放置することが好ましいはずがない。

 廃炉には膨大な費用がかかる。そうなった時は電力業界は国の関与、支援を求めたいところだろう。

 日本を襲う巨大地震・津波の予測はかつてなく厳しい。国民の生命と財産を守る国の責任はより重大になっている。

 ならば、運転再開中止を命じられる高速増殖炉原型炉もんじゅを含め、安全性に問題のある原発の廃炉への道筋を明確に示す。そのうえで、国と電力業界が廃炉経費をどう分担するのか、安倍政権は方向性を打ち出す必要があろう。

 税金にしても、電気料金への転嫁にしても、負担増について国民の理解を求める手続きに着手すべきではないか。原電は規制委の報告をまず受け入れてもらいたい。

(2013年5月17日朝刊掲載)  

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