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社説・コラム

『記者縦横』 超低空飛行 突然の恐怖

■三次支局 桜井邦彦

 ゴーという落雷のような音。続いて山際すれすれに灰色の飛行機1機が超低空で現れ、わずか5秒ほどで山を越えた。米軍のFA18ホーネット戦闘攻撃機とみられる。広島県三次市君田町の君田温泉森の泉の駐車場にいて目撃した。日時は4月30日の昼下がり。駐車場には行楽客が大勢いた。

 私が米軍機の超低空飛行に出くわしたのは2回目。2011年には、同市作木町で2機のFA18が離陸直後のような低さで真ん前から3D映像のように相次いで迫ってきて、谷に沿って飛び去った。直下の作木小校庭から聞こえた児童の悲鳴をよく覚えている。

 低空飛行が恐ろしいのは予測できない点だろう。何の通告もないまま突然、はるか遠くの基地からやってきて山里の静かな日常生活を脅かす。

 低空飛行に反対する広島、山口、島根県などの住民が先日、三次で市民ネットワークの結成集会を開いた。その席上、低空飛行の中止を求めて広島県北で活動を続けてきた元君田村長の藤原清隆さん(81)は「体験した者でないと分からない」と報告した。

 低空飛行が、困っている現地だけの問題にとどまり、多くの人の間で共有できていない現実を表した言葉だと思う。解決に向けた市民の輪の広がりが、まだ十分でない。自分自身や大切な家族の頭上を軍用機が断りもなく超低空で飛んだら、どう感じるか。日米安保の論議を超え、こんな危険な行為を認める人は日本でも米国でもいないのではないか。

(2013年5月20日朝刊掲載)

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