×

社説・コラム

『潮流』 学びの季節

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 宮崎智三

 何かを学ぶのに、ふさわしい季節というのはあるのかもしれない。原爆資料館の南側に駐車する大型バスの台数がめっきり増える初夏の今ごろもそうだろう。

 秋と並ぶ修学旅行のシーズン。平和学習のため中高生が大勢、広島を訪れる。頼まれて、中国新聞の原爆・核報道について話をすることもある。独り合点かもしれないが、子どもがどれだけ真剣かは、先生の熱意に比例しているようだ。

 夏を前にヒロシマを学ぶのは地元も同じだろう。そんな時、役立てばと作ったのが、ちゅーピー中学生・高校生新聞の特別号「学ぼうヒロシマ」である。

 タブロイド判で24ページ。被爆者の証言を聞く連載「記憶を受け継ぐ」を柱に、戦争や原爆関連の言葉の説明や、原爆投下の背景と世界の核兵器の現状なども解説している。

 先週、刷り上がるや、各学校に最寄りの販売所から届けている。対象は広島県内の全中学生・高校生と、山口県東部9市町の国公立中の生徒全員。読者は18万人を超すという。

 すぐにうれしい問い合わせが届き始めた。「朝読(朝の読書の時間)で使いたいので教員全員の分もほしい」と広島市佐伯区の湯来南高。直接手渡しし、翌日から10分程度の朝読で100人余りの全校生徒が読み進めているという。

 配った後、活用してもらえるだろうか。そんな不安は吹き飛んだ。教頭先生の話を電話で聞いていたこちらの声は、きっと弾んで聞こえたに違いない。

 ほかにも、授業などで使ってもらっている学校がある。いずれは紙面でまとめて、詳しく紹介したい。

 何かを学ぶのに遅すぎることはない―。そんな英語のことわざがあるそうだ。中高生に負けないよう、大人も学び続けなければ。資料館の方向を時折、職場の窓から眺めながら、あらためてそう思う。

(2013年5月30日朝刊掲載)

年別アーカイブ