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社説・コラム

社説 アフリカ開発会議 幅広く行き渡る支援を

 「最後の巨大市場」として存在感を増すアフリカと、どう向き合うか。支援の在り方を考えるアフリカ開発会議が、きょう横浜市で開幕する。

 安倍晋三首相は5年間で政府開発援助(ODA)など約3兆2千億円の資金を官民で拠出する支援策を打ち出す。中国のアフリカ進出の動きが活発なだけに、乗り遅れるのでは、との危機感は相当なものだろう。

 支援を強めるのは当然だ。相手国の幅広い階層が経済成長の恩恵を受けられるよう配慮する姿勢が欠かせない。

 会議は3日間にわたり、支援目標をうたう横浜宣言や、2018年までの行動計画を打ち出すという。実効性を伴う成果が挙がることを期待したい。

 かつてアフリカといえば貧困と飢餓、紛争と内戦のイメージが強かった。しかし豊富な資源をバックに経済成長が加速し、日本にとって大きな魅力である。政府と経済界が熱い視線を送るのも分かる。

 首相も各国首脳が集まるのを絶好の機会とみて「マラソン会談」に懸命だ。きのうはエチオピアの首相と懇談し、地球温暖化対策として省エネ技術を提供する方針を示した。モザンビークとは資源開発で投資協定を結ぶという。

 日本は各国との経済関係を強め、資源の安定確保に道筋を付ける構えだ。巨額のODAで道路や水道、電力など現地にインフラを整備し、日本企業が現地に進出する基盤づくりの意味合いもあるのだろう。

 また国連安全保障理事会の常任理事国入りに向けて支持を依頼する思惑も読み取れる。

 ただ、自国にとっての目先の利益ばかり追い求める姿勢だと本当の信頼は得られまい。

 アフリカ開発会議は日本主導で1993年に始まった。米ソ両陣営が覇を競い合った冷戦の終結後、国際的な関心が薄れる中で支援の枠組みを打ち立てる狙いだった。5年に1度、常に日本で開催されている。

 だが現実にはこの間、日本の支援が十分だっただろうか。アフリカへの関係強化では明らかに中国などに出遅れている。

 仕切り直しに当たり、日本としてはこれまでとは違う発想と手法も求められるはずだ。

 アフリカは広く、抱える課題も違う。独裁政権の国もある。貧富の格差も依然、深刻だ。産油国で経済成長著しいナイジェリアでも恩恵が貧困層に行き渡らず、ストリートチルドレンが多いと聞く。

 海外からの投資は地元から富を吸い上げるだけで格差を拡大しかねないという指摘もある。

 いま首相が切り札と位置付けるODAもどうだろう。ばらまき色が強く、恩恵を受けるのは専ら現地の権力者だとの批判が、かつてはあった。同じことを繰り返してはなるまい。

 むろん日本の支援策にも新味はある。アフリカから千人の若者を留学生として迎え、日本企業でインターンとして働いてもらう案も出ているようだ。

 要は現地の人たちの暮らしを支えるために、どの程度の効果があるかどうかである。

 現地で活動する日本の非政府組織も多い。今後は砂漠化防止などの分野で日本独自の取り組みが増えるかもしれない。そうした民間レベルの地道な活動への支援を忘れてはならない。

(2013年6月1日朝刊掲載)

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