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社説・コラム

天風録 「アフリカの色」

 領土をめぐり、いがみ合う国々が、子どもたちには不可解らしい。「仲よく真ん中で分けんさい」とわが子。いろいろ複雑でねと大人の事情で逃げても、言い返す子はいよう。まっすぐな国境がアフリカにたくさんあるよ、と▲暗黒大陸と呼んだ末に、欧米列強が引いた線。その地の歴史も文化もお構いなしに。植民地を脱した後も、紛争や貧困にあえぐ。そして今、埋蔵資源を目当てに各国が熱い視線を送る。「地球最後の巨大市場」とも▲投資すべきは今―。きのうアフリカ開発会議が閉幕し、安倍晋三首相は強調した。5年で1兆円強の政府開発援助を表明。企業進出に応援旗を振る。だがライバル中国の背中は遠い。桁違いの資金にモノを言わせて先を行く▲ならば持久走で勝負、でもなかろうが期間中、首相は「マラソン」会談に臨んだ。51カ国中、37人の首脳と会い、教育や農業、雇用などの支援を申し出たという。国々の自立を思ってなら、胸に届いたかも▲「金額」で押す中国に対し、日本は「人」できめ細かく。それも陣取り合戦による国々の色分けではなく、アフリカ本来の色を引き出したい。理想の大陸と、いつか子どもたちに語れるように。

(2013年6月4日朝刊掲載)

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