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日米共同開発迎撃ミサイル「欧州供与を」 米長官要求 防衛相は保留

 ゲーツ米国防長官が21日の北沢俊美防衛相との会談でミサイル防衛(MD)に関し、日米両政府が共同開発している海上配備型迎撃ミサイル(SM3ブロック2A)を欧州などの第三国へ供与できるよう対応を求めていたことが分かった。複数の日米外交筋が23日、明らかにした。

 米政府が先月、ロシアが強く反対してきた東欧でのMD施設の建設計画を中止し、中距離ミサイルに対応する海上配備型などのMD網を欧州で強化すると発表したのを受けた動きだ。武器輸出三原則の緩和につながる可能性があり、民主党内の旧社会党系や連立を組む社民党からの反対論が予想される。

 ゲーツ氏は「日本の輸出政策を緩和してほしい」と要求。北沢氏は「国内問題であり、政府部内で検討する」と回答を保留した。ただ米側はブロック2Aについて、2018年から配備する計画で、外務、防衛両省では第三国への供与を拒むのは困難との見方が強い。米側はドイツなど欧州諸国への供与を視野に来年中にも回答を得たい考えで、鳩山政権は厳しい判断を迫られそうだ。

 日本政府は2004年12月に迎撃ミサイルを共同開発、生産する場合、武器輸出三原則の適用対象から外すと発表し、対米供与に限り容認。共同開発の決定を受けた2006年6月の日米交換公文で「日本の事前同意のない目的外利用や第三国移転を禁止」と明記し「厳格な管理」を取り決めた。

 日本政府は(1)第三国への供与を武器輸出三原則の例外規定とする(2)交換公文に基づいて事前承認する―のいずれかの選択を迫られそうだ。政府内では「本来は日本防衛を想定し共同開発に入った迎撃ミサイルであり、三原則に例外規定を追加する重い判断が必要ではないか」(防衛省筋)との指摘が出ている。

 武器輸出三原則は1967年に佐藤内閣が共産圏諸国、国連決議で禁止した国、紛争当事国への武器輸出を認めないと表明。1976年に三木内閣が政府統一見解で、これ以外の国にも「慎む」とし、事実上の全面輸出禁止となった。1983年に米国への武器技術供与の例外扱いを決定。2004年に日米共同開発の迎撃ミサイルも対米に限定し例外とした。

迎撃ミサイルSM3
 ミサイル防衛のうちイージス艦から発射する迎撃ミサイルで、中距離ミサイルに対処する。米国が開発したブロック1型を踏まえ、日米は研究段階を経て2006年度から命中精度などの能力向上を図るブロック2Aの共同開発に入った。日本側は、空気の摩擦熱から赤外線センサーを保護するミサイル先端部分の覆いやロケットモーターなどを担当。米国は相手の弾道ミサイルを直撃、破壊する「キネティック弾頭」を中心に開発。日本は2007年度からブロック1型を海上自衛隊イージス艦に順次導入している。

(共同通信配信、2009年10月24日朝刊掲載)

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