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社説・コラム

社説 米中首脳会談 北朝鮮の非核化 実現を

 「新冷戦」といわれた、大国と新たな大国の関係が大きく変わるのだろうか。オバマ米大統領と中国の習近平国家主席が米国カリフォルニア州の保養地で初めて首脳会談をした。

 中国の国家主席が就任後、わずか3カ月で訪米するのは異例。米中の首脳が両国の関係について、いっそう重要性が増したと受け止めている表れだ。

 ネクタイを外してリラックスした雰囲気で始まった会談の冒頭、オバマ氏は「米中関係は両国の繁栄と安全のためだけではなく、アジア太平洋と世界にとって重要」と述べた。その通りだろう。

 両首脳は米中が「新たな形」の協力関係を築くことで一致した。両国は大国の責任を果たし、とりわけアジアの平和と安定に貢献してもらいたい。

 オバマ氏は4年前の就任時、中国との協調に前向きだった。しかし中国が東シナ海や南シナ海で領有権の主張を強めて周辺国を脅かす行動を繰り返したため、路線を変更し、外交・安全保障の重点を中東などからアジアへ移す戦略を進めている。

 両首脳の会談は、中国の指導者の世代交代を機にそれぞれ両国の関係を仕切り直ししたい思惑があろう。

 会談の中身で期待が持てるのは、北朝鮮の核・ミサイル問題への対応である。この問題についてオバマ氏が米中の協力が必要と強調し、習氏も同様の認識を示した。

 北朝鮮への経済制裁に中国は消極的な姿勢を続けてきたが、ここにきて変化がみられる。3回目の核実験後、国連安全保障理事会が制裁強化決議を採択したのを受け、中国の国有銀行が北朝鮮の口座を閉鎖した。

 態度を軟化させている北朝鮮が、米中首脳会談を意識しているのは確かだろう。北朝鮮の非核化を実現するため、さらに米中の連携を強めてほしい。

 気になるのは、習氏が「太平洋には両国を受け入れる十分な空間がある」と語ったことだ。

 発言は、米国との対立を避けたい意向を示すとともに、アジア太平洋地域で中国の権益を尊重するよう求めたとみられる。太平洋に面しているのは米中だけではなく、多くの独立国の反発を招きかねない。

 中国がこれまで通り海洋進出を続けるということであれば、周辺国は受け入れられまい。各国との衝突が起きることがないよう自重すべきである。

 今回、会談の最大の目的は両首脳の個人的な信頼関係の構築というが、個別の課題の多くは両国の溝が大きいようだ。例えば、「中国発」とされるサイバー攻撃については両首脳とも共通ルールづくりが重要との認識で一致したが、習氏は「わが国も攻撃の被害者」との立場を崩さなかった。

 それでも両首脳の会談が米中の協調を前進させたのは間違いあるまい。

 沖縄県の尖閣諸島をめぐり中国との対立が続く日本政府は、米中首脳会談に際し、日本の意向を伝達するよう米側に伝えたという。だが米国に頼り切っていたのでは事態を打開できないのではなかろうか。

 まずは安倍晋三首相が早期に習氏ら中国の首脳と会談し、直接、解決策を話し合う必要がある。日本独自の外交力があらためて問われよう。

(2013年6月9日朝刊掲載)

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