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社説・コラム

『備後語録』 宮城教育大教授 吉川和夫さん

宮城教育大教授 吉川和夫さん(58)=仙台市青葉区

人の心潤す音楽の力実感

 「被災地ではようやく再建が始まった学校や家が多い。ピアノを楽しむ日常がやっと戻ってきた段階」。6日、福山市のリーデンローズで講演し、東日本大震災の被災者宅や小学校にピアノを贈るボランティア活動について語った。

 2011年6月、仙台市のピアニスト庄司美知子さんたちと「被災地へピアノをとどける会」を結成。各地の日本ピアノ調律師協会員や運搬会社の協力も得て、中古グランドピアノや新品の電子ピアノなどを計320台届けてきた。全国からの寄付が支えだ。

 「壮絶な現実を前に、音楽が一体何の役に立つのかと悩んだ時期もあった」。届けた先で人々がピアノを弾いたり聴いたりして、泣き笑いする姿を見た。音楽には人の心を潤す力があると確信したという。

 先日、岩手県大船渡市の教育委員会から相談があった。再建が必要な小学校の用地がようやく見つかり、16年にも新校舎が建つという。だが寄付頼みの活動が、それまで続く見通しは立っていない。

 リーデンローズの溝入敬三館長は東京芸術大の同級生。「東北と福山は遠い。だからこそ、復興に時間がかかっている現状を知ってほしい。どうか関心を持ち続けてください」(久保友美恵)

きっかわ・かずお
 被災地へピアノをとどける会(仙台市)副委員長。大学では作曲を指導している。とどける会事務局Tel022(264)1846。

(2013年6月11日朝刊掲載)

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