×

社説・コラム

福島第1原発構内ルポ がれき散乱 収束遠く 高線量の中 過酷な作業

 廃炉作業が続く東京電力福島第1原発の構内に14日、入った。大量の汚染水を保管する地上タンク約千基が立ち並び、4号機では使用済み核燃料を取り出す準備作業が進む。放射線量が高いエリアには、津波で押し流された車や、水素爆発で吹き飛んだがれきが散乱していた。2年3カ月前の震災から時が止まったように。(論説委員・東海右佐衛門直柄)

 放射線量は毎時1800マイクロシーベルト―。炉心溶融した3号機近くで、私たち報道陣を乗せたバス車内は静まりかえった。同乗した東電の担当者が、持参した線量計の値を読み上げた瞬間のこと。1年間で許される線量をわずか30分余りで超えてしまうレベルだ。

 爆発で建屋の上部が吹き飛んだ4号機の外壁は崩れ、鉄筋がむき出しになった。建物を覆う骨組みにクレーンを据え付け、11月から使用済み核燃料を取り出す作業を始めるという。

 廃炉に向けた工程で「最大の課題の一つ」とされる汚染水。東電は1~3号機の原子炉に水をかけ、その水の放射性物質をほぼ取り除いて再び注水する循環冷却を今も続ける。ただ1日400トンもの地下水が流れ込み、作業を阻む。

 廃炉まで30~40年かかる。溶け落ちた核燃料を取り出す方法は、確立できていない。

 敷地内に約1時間20分滞在し、胸ポケットに差した線量計は21マイクロシーベルトを示した。過酷な環境下で働く作業員は1日3千人。目に見えない放射線の恐ろしさと、廃炉までの気の遠くなるような苦難をあらためて痛感した。

 避難した住民15万人の帰郷はいまだ見通せない。事故が収束したとは到底いえない。

(2013年6月15日朝刊掲載)

年別アーカイブ