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社説・コラム

改憲論議や岸田派の役割について 古賀誠名誉会長に聞く

 今の憲法改正論議や岸田派の役割などについて、同派の古賀誠名誉会長(72)に聞いた。(坂田茂)

 ―護憲の立場からの発言が注目されています。
 悲惨な戦争の痛手から復興し、繁栄する日本を築く中で、憲法が果たした役割を否定できる議員はいない。平和主義、国民主権、基本的人権の尊重の3原則は変えてはいけない背骨。9条1項は「世界遺産」で、世界の国々がうらやましいと思っているだろう。

 改正論議が悪いとは思わない。3原則を忘れることなく議論してほしい。

 ―改憲の国会発議要件を緩和する96条の改正論議をどうみていますか。
 最高法規として、安易な改正を防ぐための基準が必要だ。条項によって改正のハードルを下げようという意見もあるが、明確に反対する。

 ―野中広務元官房長官たちと訪中した成果は。
 会った中国の要人たちは「安倍政権が軍国主義を目指している」と、こちらが考えられないことを言う。それは誤解で、安倍首相も民主的で平和主義を求めていると言ってきた。主権について言うべきことは言わないといけないが、日中双方が謙虚で、誠実な姿勢が欠かせない。

 ―改憲やアジア外交をめぐり、派閥幹部の発言が聞こえません。
 改憲については、国民的議論になっていないからだ。ただ、派閥会長の岸田文雄外相や座長の林芳正農相(参院山口)たちが自分の考えをもう少し発信してもいい。

 もちろん、宏池会として、国の運営に自覚と責任を持つことも重要だ。政権を支えるため、発言を自重する場面があるのも分からないではない。私だったら我慢できないがね。

 ―右傾化を指摘される政治状況をどう思いますか。
 私の政治の原点は、先の大戦で父がレイテ島で戦死し、苦労を背負った母の後ろ姿にある。護憲派、ハト派とか言われるが、自分では「ど真ん中」と思っている。自民党全体が右に寄り、相対的に左に見られるだけ。党の幅広さが失われたからだろう。

 ―宏池会の役割は。
 戦争の悲惨な記憶がない若い政治家が日本のリーダーを務めなければならない時代。戦争の記憶を継承し、日本の平和に生かしてもらわないといけない。それを担うのが宏池会。役割は大きい。

こが・まこと
 1940年、福岡県生まれ。80年の衆院選で初当選。衆院議員10期の間、運輸相、自民党幹事長などを歴任。昨年12月の衆院選に立候補せず引退した。日本遺族会会長も務めた。

(2013年6月16日朝刊掲載)

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