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社説・コラム

天風録 「留学倍増計画」

 新たな国づくりを担う決意を抱いていたに違いない。幕末に藩の命で英国に密航し西洋の技術を学んだ留学生たちがいた。「長州ファイブ」と呼ばれる伊藤博文ら5人。ことしは渡航から150年になる▲彼らのような若者を求めているのか。長州出身の安倍晋三首相が成長戦略として、2020年までに日本人の留学生を倍増させる計画を打ち出した。海を渡る学生数はじり貧をたどる。世界に目を向ける若者が増えれば頼もしくはある▲とはいえ幕末とは異なる。外国からは教われない問題も多い。他国に例がない速さで進む少子高齢化にしても答えは日本の中で見いだすしかあるまい。若者の「内向き」志向も当然かもしれない▲きのう「慰霊の日」を迎えた沖縄の基地問題も日本人が自ら解決策を導く必要があろう。首相は「沖縄の負担を少しでも軽くする」と誓った。それが普天間の県内移設では県民は納得しないだろうに▲長州5人衆の意識を変えたのは、ロンドンの街の繁栄ぶりという。現実を目の当たりにする経験は掛け替えのないもの。沖縄と本土の一部の大学には単位を互換できる制度がある。首相は「沖縄留学」の倍増計画も掲げてはいかが。

(2013年6月24日朝刊掲載)

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