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社説・コラム

社説 中韓首脳会談 「日本外し」一層鮮明に

 韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領が中国を訪問し、北京で習近平国家主席と会談した。

 2月に就任した朴大統領にとって、米国に次ぐ外遊先である。韓国の大統領が日本より先に中国を訪れたのは初めて。中国重視を強く印象付けた。

 中韓両首脳は共同声明で、北朝鮮の核保有を認めないことや、非核化に向けて努力することなどを盛り込んだ。

 2006年以降、北朝鮮は3回の核実験とミサイル発射実験を強行している。なのに6カ国協議は決裂したまま再開できていない。

 習氏は協議再開への意欲を語ったという。北朝鮮の核に脅かされている日本としても歓迎できよう。

 北朝鮮の最大の後ろ盾である中国が、金正恩(キム・ジョンウン)第1書記よりも先に韓国との首脳会談に臨んだ。しかも中韓連携を明確にした。地理的に両国と挟まれた北朝鮮に対し、効果的な外交圧力となるはずだ。

 もっとも、対米関係を絡めた駆け引きという側面はあるだろう。6カ国協議の議長国である中国にすれば、米国の影響力は抑えたい。韓国との関係強化を通して、主導権を確保したい意図が見え隠れする。

 一方の韓国も、米中双方と緊密になればなるほど自らの存在感を高めるという思惑がありそうだ。

 中韓首脳は共同声明で、日中韓3カ国の「信頼構築が重要」との認識で一致したと述べた。

 あえて日本を含めたとはいえ、「外交辞令」にすぎないのではないか。中韓の蜜月ぶりは「日本外し」との懸念すら呼んでいる。

 昨年から今年にかけて日中韓の首脳が交代した。トップがどれだけ早期に顔合わせできるかで、信頼を築くスピードも違ってくる。ところが安倍晋三首相は、就任から2カ月後に米オバマ大統領と会談したのがやっとである。中韓との対話の糸口はつかめていない。

 韓国の経済発展と中国の大国化が進むにつれ、各国での対日関係の優先度は下がっている。現実は厳しい。

 中韓が今回、自由貿易協定(FTA)を早期に締結することで合意したのもその証左といえよう。韓国にとって中国は最大の貿易相手国である。対日貿易額は遠く及ばない。朴大統領が訪日よりも訪中を先にした判断に、とやかくは言えまい。

 日本からすれば、領土問題をめぐり中韓両国が強硬姿勢をあらわにしていることが、対話を困難にしている面はあろう。

 ただ、理由はほかにもある。安倍政権の歴史認識や従軍慰安婦問題などが複雑に絡み合い、影を落としているからだ。

 歴史認識問題をめぐる朴大統領の対日認識は、日本が想像している以上に厳しい。中国も大きくは変わらない。日本は自覚すべきである。

 岸田文雄外相は、東南アジア諸国連合(ASEAN)関連会合が開かれるブルネイで日米韓3カ国外相が会談することを明らかにした。中国外相との接触も探っている。

 中韓双方との関係改善に一歩でも近づけたい。拉致問題の進展を期すためにも重要である。手詰まり感を自ら打開するには何を直視し、何をすべきか、考えることが求められている。

(2013年6月29日朝刊掲載)

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