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社説・コラム

社説 オスプレイ追加配備 なし崩し いつまで続く

 日米両政府は沖縄県の意向など、お構いなしのようだ。

 防衛省はきのう、米軍普天間飛行場(宜野湾市)に追加配備される垂直離着陸輸送機MV22オスプレイ12機が28~31日に米海兵隊岩国基地(岩国市)に搬入されると発表した。8月上旬にも普天間に移される。

 海兵隊は中型輸送ヘリコプターの後継機としてオスプレイ計24機の普天間配備を進めている。うち最初の12機が昨年、やはり岩国経由で配備された。

 だが、オスプレイの安全性への懸念は拭えていない。沖縄県の仲井真弘多知事は追加配備について「OKですよとはとても言えない」と反対の姿勢を示す。地元を無視した、なし崩しの配備は許されない。

 最初の12機が岩国に陸揚げされたのは昨年7月だった。試験飛行などを経て、その3カ月後に順次、普天間へ移された。

 その際、日米両政府はオスプレイの運用について、プロペラを上向きにするヘリモードでの飛行を「米軍の施設および区域内」に限ることなどで合意した。過去の事故の大半が、このモードで起きているからだ。

 ところが沖縄ではたびたび、市街地の上空をヘリモードで飛んでいる。住民の安全を守るための合意がないがしろにされているといえよう。

 しかも沖縄県は普天間の県外移設を求めているが、政府・自民党は辺野古(名護市)沿岸部への県内移設の方針を変えず、手詰まり状態となっている。このままオスプレイが追加配備されれば、しばらく普天間に居続けることになりそうだ。

 こうした日米双方による「地元軽視」を、いつまでも続けていいはずがない。

 沖縄だけの問題ではない。普天間のオスプレイはことし3月から、本土での飛行訓練を始めた。さらに12機が加われば、訓練はより頻繁になるだろう。

 岩国基地を拠点にした本土訓練はこれまで5回実施された。初回は事前に、機数や飛行期間、高度、訓練ルートが中国四国防衛局から地元の山口県と岩国市に伝えられた。2回目以降は機数と大まかな到着時間といった情報にとどまっている。

 山口県の山本繁太郎知事がきのう、県庁を訪れた左藤章防衛政務官に詳細な訓練情報の提供を求めたのは当然だろう。米軍の低空飛行訓練に苦しめられてきた中国山地の住民も、追加配備に不安を感じている。

 一方、追加配備に先駆けて波紋を広げたのが、日本維新の会共同代表の橋下徹大阪市長の発言だった。大阪府の八尾空港でオスプレイの訓練の一部を受け入れる構想を表明した。

 ただ、自らの慰安婦についての発言をめぐり、失地回復を狙ったパフォーマンスと受け止める向きが多い。そもそも八尾空港の機能では受け入れは難しいとされる。

 沖縄の負担軽減という橋下氏の問題意識はうなずけるにしても、八尾市民の意思も聞かないままの独断専行では、実現するはずはなかろう。

 オスプレイを岩国に搬入する今回の日程が参院選後になったのは、選挙への影響を恐れ、日本政府が米国に配慮を求めたためとされる。配備がどうしても必要と言うのなら、政権を担う自民党は参院選で堂々と主張すべきだ。

(2013年7月2日朝刊掲載)

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