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社説・コラム

社説 日韓外相会談 北朝鮮対応の糸口探れ

 ようやく、の感が強い。安倍政権の発足から半年余り。岸田文雄外相と、韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外相の会談がブルネイで実現した。日韓の外相会談は9カ月ぶり。それぞれの現政権が発足してからは初めてである。

 関係改善への一歩には違いなかろう。とはいえ、東南アジア諸国連合(ASEAN)の関連会合の場を借りた、わずか30分の会談である。冷え込んだ現在の日韓関係を考えれば、本格的な修復はまだ遠いと言わざるを得ない。

 北朝鮮の外相も出席した閣僚会議では、足踏み状態となっている核、ミサイル問題の打開が期待されたものの、協議は平行線に終わった。

 そんな状況だからこそ、日本はまず韓国との間で、大局的な見地から連携を深めなければならない。

 日韓外相会談の実現には、両国と同盟関係にある米国の働き掛けもあったようだ。日韓関係にひびが入ったままでは、東アジアの安定は程遠いと心配しているのだろう。

 ただ会談の中身を見ると、歴史認識の問題で韓国側から日本へ厳しい注文が出るなど、ぎすぎすした印象が残った。朴槿恵(パク・クネ)大統領は国内世論への配慮もあって日本と距離を置く姿勢だ。このままでは日韓首脳会談が実現するとも考えにくい。

 一方ここにきて、北朝鮮問題は複雑な展開をたどっている。

 6カ国協議への復帰を示唆するなど、北朝鮮は挑発一辺倒から対話路線へと比重を移しつつあるとみられていた。瀬戸際外交では国際社会の批判が高まるばかり。中国も金融制裁に踏み切った。戦術の行き詰まりを実感しているのは間違いない。

 ところが一筋縄ではいかない。閣僚会議で北朝鮮が「米国の核の脅威」を非難したのも、米国との直接対話を求める本音の裏返しであろう。結局、溝は埋まらず、6カ国協議再開への道筋は付かなかった。

 だからこそ、日本の役割が求められている。核、ミサイル問題を解決するには、やはり対話を積み重ねるしかない。

 気になるのは日韓関係だけでなく、日中関係も冷え込んでいることだ。岸田外相は中国の外相と接触すらできなかったという。日本の外交力の低下とみられても仕方あるまい。

 さらに韓国の朴大統領は先月、これまでの慣例に反し、日本より中国を先に訪問して習近平国家主席と会談した。中韓が連携して日本の存在感を低下させる「日本外し」との見方も強まっている。

 この流れが加速すれば、日本にとって最重要課題の一つである拉致問題解決の糸口を見つけようにも、国際理解は広がるまい。それは結果的に、北朝鮮を利する。

 ここは積極的に韓国と連携し、6カ国協議の枠組み再開を関係国に強く働き掛けるべきではなかろうか。韓国や中国にしても、北朝鮮の現状を放置していてはアジアの安定は到底望めないという点では、完全に一致するはずだ。

 北朝鮮の暴走を食い止めるための外交努力を重ねる。それが結果として、韓国や中国との対話を深める糸口となる。そんな視点があってもいい。6カ国協議以外に、東アジアには多国間の対話の場はないからだ。

(2013年7月3日朝刊掲載)

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