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社説・コラム

天風録 「1票の重み」

 きょう始まる参院選は投開票の明くる日に、もう選挙無効と訴えられる。1票に軽重があるのをよしとしない弁護士たちが全選挙区で蜂起するという。当選のあかつきに、裁判に巻き込まれるとは何とも締まらない▲3年前の参院選で1票の格差は5倍を超えた。ついに最高裁から「違憲状態」のイエローカード。国会の手直しは、一線を何とか守るその場しのぎにとどまっている。是正のテンポが飽きたらぬ、のろしの「一票一揆」なのだろう▲不平等の種火は、そこここでくすぶる。原発や米軍基地の負担しかり、懐の温まり具合の差が目に付きだしたアベノミクスしかり。しわ寄せが地方や弱者に強いられる政治はいっこうに代わり映えしない▲とりわけ東北の被災地は票の重みを実感していることだろう。あの日から、はや3年目。立ち直りの道しるべを今度こそ示せるのは誰か、どの党か。亡くした家族や友の思いも背負っての選択という人も少なくあるまい▲もとより投じられなければ、不平等も何もありはしない。意中は定まらずとも、のしかかる重荷にあえぐ地域に添う1票なら思い浮かぶかもしれない。手中の票がひと味違ってくる気がする。

(2013年7月4日朝刊掲載)

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