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社説・コラム

『潮流』 映像が引きつける力

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 宮崎智三

 退屈そうにしていた子どもの目が急に輝き始める。広島を訪れる修学旅行生向けの平和学習。小中学生には難しい話でも、映像を見せると身を乗り出すように関心を示すケースに何度となく出くわした。

 どうすればヒロシマの思いを伝えられるか。何を話せばよいのか。悩みながら臨む立場からすると、悔しく思うこともあった。

 1分間の動画には文字にして180万字の情報伝達力があるそうだ。新聞だと見出しや写真のない記事だけの紙面で180ページ分。

 記憶容量だけ考えれば、逆立ちしても映像にはかなわない。きっと、子どもなりに関心のもてる何かを発見しながら見てくれているのだろうと、私たちも平和学習に時折使っているのが、DVD「1945 原爆と中国新聞」である。

 この中のお薦めは、幾つも盛り込まれた被爆前後の貴重なドキュメント映像だ。原爆投下前の市民の暮らし。焼け野原になった街。投下16時間後のトルーマン米大統領の演説。窓枠が壊れたままの学校で元気よく勉強する子どもたち…。そんな動画を見せると、原爆や平和の問題に関心の薄い子どもたちでも、こちらに集中してくれる。

 百聞は一見にしかず。何かを見つけたり感じたりするのは、子どもに限ったことではないだろう。大学生なら、もっと関心を寄せるかもしれない。被爆証言の動画を講義で使いたいという大学の先生が現れた。

 本紙朝刊「平和」のページに連載中の「記憶を受け継ぐ」の取材に合わせて被爆者を撮った記録のことである。学生たちはこちらの期待通り関心を示すだろうか。どんな講義になるのか。今から楽しみだ。

 子どもたちの目をいかに輝かせるか。ヒロシマを広く伝えていくため、欠かせないことの一つだろう。それも、大人の重要な役割だと自覚したい。

(2013年7月4日朝刊掲載)

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