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社説・コラム

社説 参院選きょう公示 私たちは何を選ぶのか

 選択の時を迎えた。参院選がきょう公示される。主権者である私たちは今回、どんな物差しで、いったい何を選び取ればいいのだろう。

 最大の焦点は、衆参で与野党の勢力が逆転している「ねじれ国会」の行方とされる。有権者の1票が、その継続か解消かに直結するのは言うまでもない。

政権の中間評価

 すなわち昨年末の衆院選の勢いそのままに、高い内閣支持率を維持する与党が参院でも過半数を獲得できるか。言い換えれば、発足から半年余りの安倍政権に対する中間評価でもある。

 その選択基準について、アベノミクスを挙げる人は少なくないだろう。一定の揺り戻しはあるものの、急速な円安・株高が、昨年までの民主党政権時に広がった閉塞(へいそく)感を晴らしつつあるのは疑いようがない。

 とはいえ、あまねく地方に効果が行き渡ってはいない。日本経済の先行きに、誰もが自信を取り戻したともいえまい。さらに大盤振る舞いの経済・景気対策を続ければ、財政健全化への見通しはますます曇る。

 原発の再稼働や輸出をめぐる是非、年金をはじめとする社会保障の将来、消費増税の功罪、環太平洋連携協定(TPP)や憲法改正の行方…。課題が山積する中で、震災復興にしても地方分権にしても、決して十分ではない。

 きのうの党首討論も、政策をめぐる意見はかみ合わない場面が目立った。投票先を決められた人が、どれほどいただろう。

気になる投票率

 すぐには「解」の出ない難題が多すぎる。少子高齢化とグローバル化が同時に進む時代にあって、いまだに私たちは日本という国の目指すべき姿を見いだせていないのかもしれない。

 先月の都議選もそうだった。参院選の前哨戦で政権与党側の圧勝は、投票率の低さが手伝ったのは間違いない。

 大半の野党が存在感を発揮できていないのが大きい。それゆえの「消去法」がもたらした与党側の大勝であって、安倍政権への全面信任とはいえそうにない。今回の参院選にしても、低投票率が心配される。

 先の国会も、国民の政治不信を募らせた。低調な論戦に終始したばかりか、最終日の混乱でいくつもの重要法案が廃案に。ねじれがもたらす負の側面に、国民がうんざりしているのは確かだ。

 直近の共同通信社の調査で、国民の56%が「与党の参院過半数」を求めたのも、その表れといえよう。

 むろん3年余りの民主党政権の失政ぶりが、今のねじれを招いた根本要因である。だが自民が衆参ともに「1強」の勢力を手にすることは、少数意見がいっそう埋没するリスクも伴う。

政党政治復権を

 ねじれの解消いかんはあくまで参院選の焦点、結果である。争点とは呼べまい。むしろ真に終止符を打つべきは、政党政治のふがいなさではないか。

 各党は選挙戦で、政策論争を究めてほしい。他党の揚げ足取りではなく、地に足の着いた公約を競ってもらいたい。それが政党政治の復権につながる。

 その意味では、今回初めて実施されるネット選挙が局面を変えるかもしれない。政党や候補者からすれば、政策や人物像をアピールしやすくなる。

 有権者も問われる。ネットにあふれる情報の真偽を見抜く力が求められる。玉虫色になりがちな各党の公約から日本の将来を左右する政策課題を見いだすと同時に、陰に隠れた痛みを見分ける必要もあろう。それは政党を鍛えることにもなる。

 アベノミクスがデフレ脱却に奏功するにしても、富の格差の解消につながるかは別問題である。そもそも人口減少の時代に右肩上がりの成長が持続できるだろうか。選挙戦を通じて私たちは、この先の日本を、地域を考えたい。次世代にどんな政治を引き継ぐかも。

 投票用紙に書き込むべきは、主権者一人一人の信念かもしれない。各党の公約を十分に吟味して投票所に向かおう。私たちのあすを、1票で選び取ろう。

(2013年7月4日朝刊掲載)

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