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社説・コラム

天風録 「政令文熱」

 包囲され、カンフーの達人も絶体絶命。だが宙に舞うや、四方八方銃を撃つ。敵は皆、倒れた。北京で見たテレビの抗日ドラマ。英雄が日本軍をやっつける物語は言葉を知らずとも分かりやすい。他の局でも抗日ものをやっていた▲定番らしく、制作数は年200本以上に及ぶとも。だが最近、当局は規制にかかる。日本への配慮かと思いきや、荒唐無稽が過ぎるとの理由。娯楽路線はネットでも非難された。反日感情が少しは収まるだろうか▲一方で「話の通じる」中国人も増えそう。世界で日本語を学ぶ人が一番多いのは中国。4年前から26%アップし100万人を超えた。奇抜さを競う抗日ドラマより、アニメや漫画への関心が勝ったか。未来志向の動きに期待しよう▲翻って日本はどうか。古くから大陸の文化を受容した。故事や漢詩など今に生きる中国の言葉は多い。先日の本紙に広島県での吟詠大会が載っていた。ジュニア世代も朗々と吟じ、李白や杜甫の詩に親しんでいる▲政冷経熱。微妙な日中関係を表してきた四字熟語である。政府間だけでなく今や「経冷」気味に。隣人との関係を取り戻すため、文化を見直そう。まずは政冷「文熱」から。

(2013年7月10日朝刊掲載)

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