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社説・コラム

『潮流』 グローバル人材?

■論説委員 東海右佐衛門直柄

 久しぶりに英語の参考書を解いてみた。中学校以来、長く学んでいても、やはり難しいものである。

 英語圏の大学などで学びたい人が、語学力の証明に使う試験のTOEFL。聞く、読む、話す、書くの4技能が試され、英検1級より難しい内容も含まれる。例えば長文読解では、魚の遊泳法の論文を読み、「ウナギの泳ぎ方が非効率的な原因」を問われる。

 このテストが注目を集め始めている。TOEFLで一定の点数をとらなければ国公立大の受験や卒業ができない―。こんな提言を自民党がまとめたからだ。今後、日本の英語教育が大きく変わる可能性がある。

 改革の狙いは「グローバル人材」の育成にあるという。国際化が進み、英語力のある人材が企業などから求められているのは事実だろう。文法学習に偏りがちで「ガラパゴス化」しているという今の英語教育に、変革を求める声は強い。

 ただ、高レベルのTOEFLを大学入試のプロセスに組み込めば、高校の授業についていけない生徒が増える可能性も高い。

 日本の学習指導要領で求められる英単語は中高で3000語。一方、TOEFLには1万語を理解する力と、論理的に英作文を書く力が要る。難解な問題を前に、多くの学生は無力感を抱くかもしれない。

 全員に高度な英語力を習得させることは、どこまで必要なのか。将来、留学や仕事で英語力が必要になった際、自分で力を伸ばせる基礎力こそ大切だろう。入試を難しくするのではなく、少人数クラスや質の高い教員、機材の拡充が欠かせない。

 グローバル人材イコール英語ができる人、ではなかろう。母国語でしっかりと考える思考力、未知の世界にも飛び込む行動力も重要なはず。この素養を鍛えることこそ、国際人の育成ではないか。

(2013年7月13日朝刊掲載)

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