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社説・コラム

社説 ’13参院選 原発政策 たたみ方の議論深めよ

 なし崩し的に原発の再稼働が進むのではないか。私たちは何のために節電を続けているのだろう。この国の原発・エネルギー政策の先行きに、不安や疑問を募らせている国民は少なくないだろう。

 なのに、この参院選での議論が深まらない。国民の関心をよそに、各党の論戦はすれ違ったままである。

 再稼働へ前のめりになるのではなく、ここは福島の事故を思い出し、原点に立ち戻ろう。国民の安全・安心こそが最優先であり、そのためには原発の依存度を下げるしかないはずだ。

 そうした観点からすれば、各党の公約は物足りない。

 まず自民党。昨年末の衆院選では「原子力に依存しなくてもよい経済・社会の確立」を目指すとしていた。それが今回は「再稼働は地元自治体の理解が得られるよう最大限努力」などへと変わっている。

 原発停止に伴って電気料金がさらに上昇すれば、景気に冷や水を浴びせかねないとの懸念は理解できよう。だとしても、これでは長期的なエネルギー政策への視点が見えない。

 民主党政権当時とはいえ、政府の討論型世論調査で大半が原発に依存しない社会の実現を望んだのは、つい昨年のことだ。

 だが自民党政権は国民的議論もないまま、あたかも震災前に回帰するような政策を次々と打ち出してきた。再稼働に向けた動きをはじめ、核燃料サイクルにしても維持する方向をにじませる。安倍晋三首相による海外への原発のトップセールスも続く。

 一方、自民党を除いては、連立与党の公明党も含めた8党が将来の原発ゼロを目指す、との公約を掲げてはいる。

 ところが再稼働をめぐる姿勢は分かれる。生活や経済への打撃をできるだけ抑えながら、再生可能エネルギーをどう増大させるかについての具体策も、総じて生煮えの感が否めない。

 原発のたたみ方をめぐっては、もはや議論の先送りは許されない。与野党ともに、そこを忘れてもらっては困る。

 今月施行された原発の新規制基準で、廃炉が迫られる原発が相次ぐことは確実となった。では、廃炉は誰が最終決定するのか、その手順とコストを電力会社だけに委ねておいてスムーズに進むのかどうか。具体的な仕組みづくりがなければ、国民の不安は解消できない。

 核燃料サイクルにしても、現状の行き詰まりは明らかだ。使い切る当てもないまま、核兵器の材料になるプルトニウムをため込んでいることは、核拡散防止の面からも国際社会の風当たりが強い。

 「核のごみ」と呼ばれる使用済み核燃料の処分も含め、いま議論しておかなければ、将来世代も到底、納得しないだろう。

 論ずべき点はまだある。

 各地域の電力会社の独占体制を見直す電気事業法改正案は、与野党対立のあおりで先の通常国会では廃案となった。安倍首相は「秋の臨時国会で成立させたい」とするが、電力業界の反対は根強いままだ。

 福島の事故から2年4カ月。収束は遠く、放射性物質の流出が続く。古里に戻れない被災者に寄り添った論議をしているかどうか。各党はいま一度、原点を見つめ直してもらいたい。

(2013年7月14日朝刊掲載)

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