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社説・コラム

社説 ’13参院選 外交・安全保障 米国追随を続けるのか

 このままでは、日本は東アジアで孤立してしまうのではないか。多くの国民の心配に、各党はどう答えるつもりだろう。

 領土や歴史認識をめぐり、中国、韓国との関係は冷え込んだままだ。互いに不信を募らせるばかりで、外交はもはや閉塞(へいそく)状況にあるといえよう。

 また、中国の海軍力増強や北朝鮮の核開発など、東アジアをめぐる情勢は緊迫している。

 にもかかわらず今回の参院選で、論戦は低調だ。有権者は各党の姿勢をしっかり見極め、1票を投じたい。

 いまの日本にとって、最大の脅威は中国だろう。昨年の沖縄県・尖閣諸島の国有化を機に、中国の海洋監視船が周辺海域に頻繁に繰り出し、圧力をかけ続けている。

 事態の打開を図ろうと日本側が首脳会談を模索しても、中国側は領土問題の存在を認めることを条件とするなど、強硬な姿勢を崩そうとしない。

 先行きが見えない中で、政府がアピールしているのが「強固な日米関係」である。

 「中国脅威論」を背景に、米国の軍事力に頼り、米国の後ろ盾で圧力をはねのけるべきだ、との意見はある。今回、自民党の公約が「日米同盟を強化しつつ、中国、韓国との関係発展に努める」としているのは、この考えが根底にあるのだろう。

 日本の外交の主軸は、これまでもこうした日米同盟であった。特に冷戦終結後の自民党政権下ではイラク派遣など米軍の世界戦略に事実上、自衛隊が組み込まれてきた。

 民主党政権も基本的にはその流れは変わらなかった。政権交代の前には米国に対するスタンスを見直す姿勢も示していたが、沖縄・普天間飛行場の移転問題の迷走がきっかけとなって米国との関係にきしみが生じ、日米同盟を引き続き重視する立場を鮮明にするに至った。

 日本は今、岐路に立っているのだろう。日米同盟一辺倒をこれからも続けていくのか。

 自民党は参院選後、米国との関係強化へ本格的に乗り出す構えとみられる。集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更で認めることに、安倍晋三首相は強いこだわりをみせている。

 ただこれでは、自衛隊が米国の軍事戦略によりいっそう組み込まれる可能性も出てくる。

 専守防衛の見直しにつながれば、アジア諸国からの反発も強まる恐れがある。米国に追従していれば、安全が保たれる時代でもないだろう。

 一方で、外交・安全保障をめぐる公明党や野党の公約も具体性がないものが多く、生煮えの感が強い。

 大切なのは、日本独自の外交・安全保障戦略を練り直すことではないか。米国に従うのではなく、長期的に何が平和と安定に資するのかを見定め、その中で米国との同盟関係や近隣諸国との関係を再構築することが求められよう。

 そうした視点で一つの鍵となるのが、憲法で平和主義をうたう国、被爆国としての役割である。これまでも、平和構築を軸にした多方面外交がカンボジア和平やアフリカ開発支援などでは評価されてきた。

 独自の外交で、日本の存在価値を高める。そんな視点を持ちながら、次代の針路を描き直すことはできないか。

(2013年7月17日朝刊掲載)

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