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社説・コラム

社説 自民1強時代 健全野党をどう築くか

 参院選は自民党と公明党が計76議席の大勝に沸く一方、野党側の力不足が際立った。とりわけ昨年まで政権を担った民主党は結党以来最低の17議席と、目を覆いたくなる惨状である。

 昔のような「自民1強」時代に逆戻りした感がある。日本に根付いたかに思われた二大政党制は崩壊寸前ともいえよう。

 3年後は衆参ダブル選との見立てもある。このままなら政権交代を可能とする選択肢が、きちんと示せるか思いやられる。

 衆参の「ねじれ」を解消し、長期政権を狙う安倍晋三首相の行き過ぎに歯止めをかけ、有権者が思いを託せる対立軸をどのように築いていくか。今こそ健全野党が求められる。

 今回の選挙は安倍政権にとって思惑通りに違いない。争点をアベノミクスの評価に絞り込むことができた上、乱立する野党に批判票が分散したからだ。

 与党に入れたくないが、野党も心もとない。無党派層の有権者の偽らざる思いは低投票率にもつながり、現政権を利した。

 その点、何より責任を問われるのが民主党だろう。

 一つはマニフェストにはない消費増税に踏み切った末、党を分裂させた前政権時代の反省をおろそかにしたまま選挙に臨んだことである。昨年の衆院選の大敗から7カ月が過ぎ、国民の憤りが収まったと高をくくっていたとすれば甘すぎよう。

 政策面の中途半端さも否めない。例えばアベノミクスの副作用はしきりに批判するが、経済再生の対案は十分示せなかった。政権批判がより明確な共産党などに票が流れ、東京や大阪で議席を失ったことは都市型政党の存在意義にも関わる。

 今のところ海江田万里代表は続投の方向だが、党の再生は簡単ではなかろう。

 二大政党の構図に風穴をあけるはずだった第三極への期待も薄らいだようだ。衆院選は54議席と躍進した日本維新の会も今回は8議席にとどまった。

 橋下徹共同代表の従軍慰安婦問題をめぐる発言の影響はあろうが、それだけとも思えない。党が掲げる大胆な統治機構改革が本当に実現しうるのか、吟味した向きもあったはずだ。

 自公政権への支持には政治の安定を望む声も含まれよう。民主政権の挫折を踏まえ、有権者の多くは「改革を」と叫ぶ風頼みの訴えに、心を動かさなくなっているのかもしれない。

 選挙結果を踏まえ、各党から早くも「野党の再結集を」という声がある。小選挙区制が続く以上、与党に対抗できる一定の勢力が欠かせないのは確かだ。とはいえ肝心の理念や政策をあいまいにしたまま離合集散するとしたら、いかがなものか。

 まず野党側に求められるのは参院選圧勝で自信を深める安倍政権へのチェック機能を十分に果たすことであろう。

 アベノミクスに伴う公共事業の大盤振る舞いによって、業界への利益誘導の構図が復活しないか。消費増税や社会保障改革で、弱者が置き去りにされる恐れもある。さらに集団的自衛権行使の容認や拙速な原発再稼働などの動きにも、しっかり目を光らせていくべきだ。

 国会論戦で政府与党の姿勢をただし、対案を示す。政策の実行力を地道に高めていく。野党の巻き返しには、そんな原点から立ち上がる必要がある。

(2013年7月23日朝刊掲載)

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