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社説・コラム

『ひと・とき』 現代美術家 照屋勇賢さん

社会の課題 鋭く刻む

 「ごくありふれた素材からも多くの可能性が導ける」。自身の作品が並ぶ「アート・アーチ・ひろしま2013」展の会場の一つ、広島市現代美術館(南区)。活動する米ニューヨークから駆け付け、来場者に語った。

 段ボール箱を〝シアター〟に見立てたインスタレーション。箱をのぞくと、さまざまな国旗を掲げた折り紙の小舟が浮かぶ映像が見える。ニューヨークの移民が多い地区で撮影し、故郷・沖縄から1900年ごろハワイなどへ移住した人々の「記憶」を重ねたという。

 「ともに厳しい現実の中で、暮らしを紡いできた。そのエネルギーをたたえたい」。これまでにも、沖縄の紅型(びんがた)着物に米兵や戦闘機の姿を染め抜くなど、現代社会が抱える課題をさりげなく、鋭く作品に刻んできた。

 被爆地広島での展示は3度目。「僕の価値観に共感する人が、自分のまなざしで何かを発見してくれれば」。同展は10月14日まで。(林淳一郎)

(2013年7月25日朝刊掲載)

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