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社説・コラム

『記者縦横』 日中友好のヒント発見

■備後本社 永井友浩

 冷え込む日中関係に気をもみながら、中国で奮闘する備後地方の製造業の現場を目の当たりにした。中国東北部の大連市と瀋陽市を今月初旬に訪れた。

 工作機械部品のチャックを製造する北川鉄工所(府中市)の現地子会社は瀋陽市の経済開発区にある。社員は日本からの出向者4人を含め18人。総経理の谷誠さんは「日中関係の悪化は割り切っている」と笑って話す。

 総経理を含めた全員が同じフロアに机を並べる。月に1日は夕食会を開催。「アットホームな雰囲気で、仕事の将来像や悩み相談も聞いている」と話す。

 定年退職前に「最後の奉公」と赴任した楢崎敏明品質管理部長は、機械の扱い方など技術を指導。「将来の幹部になってほしい」と中国人社員の働きぶりに目を細める。

 ダイカストなど製造のリョービ(同)の大連市の現地子会社では、食堂を充実させていた。麺類、まんじゅうなど3種類から選べるボリューム満点の食事で、月収の100分の1以下の月300円程度で食べられる。

 昼時には大勢の中国人社員が楽しそうに列をつくる。望月達由総経理も同じ料理を食べる。「現地になじまなければ本当の信頼を得られない」と言う。

 2社はいずれも、日本の最新鋭の大型機械を導入するなど設備投資をしている。ミシンと布があれば製品が作れる繊維工場と異なり、簡単に撤退や別の東南アジアにシフトはできない。これから中国とどう向き合うのか、ヒントがここにある気がした。

(2013年7月29日朝刊掲載)

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