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社説・コラム

『潮流』 輪を広げるきっかけに

■ヒロシマ平和メディアセンター編集部長 宮崎智三

 68年前、原爆投下で壊滅的な打撃を受けた広島。中国新聞社も、社員のおよそ3分の1に当たる114人を失った。当時、爆心地から900メートルほど東にあった社屋ビルは、新聞の印刷に欠かせない輪転機を含めて炎上した。

 それでも先輩たちは3日後、焼け野原の広島に新聞を届けた。ただし「中国新聞」の題字の下に、一回り小さな文字で朝日新聞や毎日新聞と記されていた。

 空襲などで新聞発行が困難になった時、近隣の社が助け合う契約があった。代行印刷と呼ばれる。中国新聞が自力発行できない間は大阪や九州などで印刷された新聞が広島に運ばれた。

 紙不足も理由だが、国による情報統制という側面が強い。いわば上から押し付けられた「相互協力」とでも言えようか。

 ではネット時代を迎えた今、新聞同士の協力関係はどうあるべきだろう。

 おとといの朝刊でお知らせした通り、互いに核問題の専用ウェブサイトを持つ朝日新聞社と連携を始めた。第1弾として、両社の専門記者が長尺の評論を書き、双方のサイトに寄稿し合った。

 片や、国際政治の立役者たちへの取材を基に「核の傘」に固執する日本政府を批判する。片や、被爆者の思いをベースに被爆国にふさわしい振る舞いを問う。

 半ば内輪褒めのようで恐縮だが、どちらも読み応え十分である。読み比べてみてほしい。当センターのサイトでは「社説・コラム」欄に掲載している。

 双方のサイトは、性格も歩みも異なるものの、核兵器廃絶という高い目標を掲げている点は同じだ。連携スタートが広島原爆の日というのも意義深い。

 もちろん、これで満足してはいられまい。被爆70年に向け、平和関連のミュージアムや市民グループなど輪をさらに広げるきっかけにしたいと考えている。

(2013年8月8日朝刊掲載)

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