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社説・コラム

『アングル』 地域交流・平和学習に成果 山口の日本ジャンボリー全日程終了

 山口市阿知須のきらら浜で7月31日から開かれた第16回日本ジャンボリーは8日、53の国と地域から参加した約1万4千人がテントの撤去作業などをし、全日程を終了した。今大会は、2015年夏に同会場で開かれ、161の国と地域から約3万人が参加する第23回世界ジャンボリーの予行演習の意味合いもあった。中でも県内各地の住民との交流や広島市での平和学習は、世界大会に向けた重要な取り組み。今大会の成果と課題を点検した。(柳岡美緒)

■交流

 県内全19市町が参加者約2800人を受け入れる「地域プログラム」を実施。国内外のスカウトが小中高校を訪れてゲームなどで交流し、伝統芸能を体験するなどした。

 地場産業への理解を深めてもらおうと地元企業の見学もあった。堀江建治実行委員長(66)は「ジャンボリーは多くの人に支えられている。参加者に感謝の気持ちが生まれ、人間教育になった」と成果を強調する。

 一方、国内の参加者の中には外国の参加者と交流できなかったという意見もあった。参加者約1万4千人のうち外国人は約1400人。人数比の関係で、キャンプ場での交流会を国内のスカウト同士で行った参加者もおり、外国人と話す機会はトイレの待ち時間くらいだったという。

 世界大会では約3万人のうち2万4千人が外国から参加する。せっかくの機会をどう生かすかは参加者の積極性にもかかっている。

■平和学習

 山口市で世界大会を開く意義の一つが、広島市の平和記念公園などで平和学習をする「広島ピースプログラム」だ。これに備え、今大会では6日に各国・地域と都道府県の代表ら94人が平和記念式典に参列したほか、3日には約4千人をバス99台で広島市へ運んで原爆資料館の見学や被爆体験記朗読会などに参加した。

 受け入れ担当のボーイスカウト広島県連盟の酒井幸雄理事長(70)は「4千人の受け入れはおおむねスムーズにいった。迷子は出なかった」と胸を張る。

 世界大会では1日約4千人の受け入れを6日間続ける。酒井理事長は「今大会は中四国ブロックの協力を得て大学生など約70人で対応したが、暑い時期にスタッフの入れ替えなしに6日連続でやるのは難しい」と増員の必要性を指摘した。

 ピースプログラムで見たり聞いたりする機会はあったが、参加者同士が意見交換する場が少ないとの指摘もあった。堀江実行委員長は「受け入れ先の意見も聞いて検討したい」と話した。

 意見交換の場があれば、核保有国を含めて多様な各国事情を知る機会になる。世界大会のテーマである「和」にも通じるはずだ。

(2013年8月9日朝刊掲載)

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