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社説・コラム

社説 ヘリ墜落とオスプレイ 沖縄の憤り またも無視

 米海兵隊の垂直離着陸輸送機オスプレイ9機がおととい、沖縄県宜野湾市の米軍普天間飛行場に追加配備された。同県宜野座村のキャンプ・ハンセン内で起きた米空軍救難ヘリコプターの墜落炎上事故で見合わせていたが、わずか1週間で配備再開とは理解しがたい。

 関係自治体は当日、防衛省からの連絡で知ったようだ。県議会がヘリ墜落事故への抗議決議を可決した日でもある。県民の憤りはまたも無視された。

 きのうは9年前、宜野湾市の沖縄国際大構内に海兵隊大型ヘリが墜落した日でもあった。今のキャンパスに当時の痕跡はほとんど消えたが、トラウマが癒えない関係者もいるはずだ。

 沖国大は基地外にもかかわらず、沖縄の警察の捜査は米軍に阻まれ、取材妨害さえあった。

 今回のヘリ墜落現場は基地内だが、近くを高速道路が通過する県民の生活圏と言っていい。いずれは持ち主に返還されるべき公有地や私有地でもある。

 だが、今回も警察、消防は事故直後から基地立ち入りを拒否された。米軍の「排他的管理権」だ。日米地位協定に基づき、日本の国内法が適用されない典型的な例といえよう。

 火災は鎮圧されないまま再燃し、山野をさらに荒らした。ヘリ機体などに放射性物質が含まれている可能性があり、県も独自の立ち入り調査を求めている。現場付近は水源地に近く、住民の健康を守るためにも譲れないところだろう。

 また事故後、米軍が現場周辺上空の飛行を規制していることが分かった。嘉手納ラプコンと呼ばれる進入管制業務は既に返還されているのに、何が根拠なのか。報道ヘリ閉め出しが狙いなら、県民の「知る権利」の侵害にもつながりかねない。

 復帰前の沖縄では、宮森小(現うるま市)に米軍戦闘機が墜落し小学生ら18人が犠牲になる惨事があった。1972年の復帰以降も、墜落事故はほぼ毎年1件以上起きているという。

 極限状態で戦闘に即応する軍隊なら、訓練でも事故の頻度は高くなる。だが、市民が日常生活を営む傍らで行うことだろうか。今回も兵士を救出する野戦の訓練中とみられる。

 安倍政権は事態の沈静化に躍起だ。オスプレイ配備に悪影響を及ぼすとみているのだろう。安倍晋三首相は6日の会見で「沖縄の皆さんの安全確保が第一で、米側に安全面での最大限の配慮を求める」と述べ、おとといも「住民の皆さんの生活を第一に」と言を重ねている。

 だが延期は求めても、再開のタイミングは米側の「配慮」にお任せだったのか。仲井真(なかいま)弘多(ひろかず)知事は事故後も配備見直しなどを重ねて求めていたはずだ。

 事故を起こした同型機の飛行停止継続はもちろん、事故原因究明と情報提供を強く米側に求めるべきだ。そうでなければ普天間周辺の危険除去という名護市辺野古移設の大義名分まで、崩れることになりはしないか。

 西欧諸国と米国との関係に比べ、国内航空法の適用などで不利とされる日米地位協定の抜本的な見直しについても、本腰を入れなければなるまい。現地の宜野座村、事故機所属基地を抱える嘉手納町をはじめ周辺自治体の議会でも相次いで抗議決議が可決されている。主権なしに日米「同盟」とはいえない。

(2013年8月14日朝刊掲載)

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