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社説・コラム

『書評』 戦跡が映す歴史の実像 安島太佳由さん写真集

 太平洋戦争などの戦跡を撮り続ける写真家安島太佳由さん(54)=東京都=が写真集「若い世代に語り継ぐ 戦争遺産」=写真=を刊行した。「戦争の記憶を広く共有したい」と手ごろな冊子スタイルに編集。11カ国・地域で撮影した191点とコラムを盛り込んでいる。

 戦跡撮影は戦後50年の1995年から。それまではアジア諸国などで町並みや人物を撮ってきたが、「戦争時代とも向き合わなければ、日本を語れない」と感じた。

 写真集には、激戦地となった沖縄や硫黄島のほか、中国や韓国、安島さんも日本兵の遺骨収集に加わったインドネシアなどのカットを収録。ひっそりと残る地下壕(ごう)や砲台跡、太平洋の島に捨てられたままの戦車や爆撃機の残骸が、時を超えて戦争の実像を浮かび上がらせる。

 中国地方では、原爆ドーム(広島市中区)、人間魚雷「回天」の訓練基地があった大津島(周南市)などが載る。

 学校での講演活動も続ける安島さん。「無言の戦跡が語る歴史を感じ取ってほしい」と願う。

 A4判、24ページ。900円(送料別)。安島写真事務所Tel03(3976)2282。(林淳一郎)

(2013年8月14日朝刊掲載)

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