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核廃絶決議 最多170ヵ国 国連委採択 

 国連総会の第1委員会(軍縮)は29日、日本が提出した核兵器廃絶への決意をうたった決議案を採決、賛成170、反対2、棄権8で採択した。採択は16年連続で、賛成国は2006年の169を超え過去最多となった。初めて共同提案国となった米国が9年ぶりに賛成に回り、共同提案国数も87と過去最高。

 安全保障理事会の決議のように拘束力はないが、9月にオバマ米大統領が主催した安保理会合で採択された「核兵器なき世界」決議の理念を国連全体で共有した格好。来年5月に開かれる核拡散防止条約(NPT)再検討会議の成功に向け、核軍縮・不拡散強化の動きに弾みがつきそうだ。

 ただ、核保有五大国では、中国が「現実的でない」、フランスが「具体的な行動こそ重要」として棄権、核廃絶の実現が容易でないことも示した。インドと北朝鮮は反対した。

 パキスタン、イラン、イスラエルは棄権し、事実上の核保有国や核開発疑惑のある国で賛成した国はなかった。このほかの棄権国はミャンマー、キューバ、ブータン。

 日本の須田明夫軍縮会議政府代表部大使は「NPT再検討会議の成功への追い風になることを願う。わが国の今後の核軍縮努力にとり、励みにもなる」と評価した。

 前回2005年のNPT再検討会議は、非核保有国が核保有国に一層の核軍縮努力を求め、双方が対立して決裂。2010年の会議は核軍縮機運の高まりを受け「成功が期待される」(国連当局者)ものの、鍵を握るのはあくまで今後の核軍縮への努力だ。

 決議は、9月の安保理決議や、米ロの新核軍縮交渉進展などを「歓迎」。包括的核実験禁止条約(CTBT)早期発効のため未加盟国に早急に署名、批准するよう求めている。

 決議は総会本会議に送られ、12月初旬に総会決議として採択される予定。

(共同通信配信、2009年10月31日朝刊掲載)


<解説>廃絶機運の高まり映す 実現へスピード感が要

■記者 林淳一郎

 被爆国日本が国連総会第1委員会に提案した核廃絶決議が、過去最多の賛成を得て採択された。「核兵器のない世界」を目指す国際社会の機運の高まりをあらためて示した点は評価したい。一方、9月の国連安全保障理事会会合で核兵器のない世界へ向けた決議に賛同したフランスと中国は棄権。国際政治の複雑さも浮き彫りにした。

 170カ国の賛成は国連加盟国192カ国の9割近く。核超大国の米国が初めて共同提案に名を連ねたことは、昨年まで8年連続で反対した前政権からのチェンジを象徴する。

 しかし、同じ保有国の中国とフランスが棄権したことは、世界各地で盛り上がる機運に冷や水を浴びせた。日本の外務省は「現実的で具体的な行動を盛り込んだ」と決議内容を説明するが、理解を得られなかった。

 鳩山由紀夫首相は内外で「核廃絶の先頭に立つ」と明言している。有言実行には、今回も反対した北朝鮮や核拡散防止条約(NPT)未加盟のインドも含め、保有国や核開発疑惑国を核軍縮・廃絶の輪に取り込む外交手腕こそが問われる。

 16年連続の採択自体は歓迎すべきだが、この間、廃絶に向けてさしたる成果がなかったことも国際政治の現実だ。来年5月のNPT再検討会議まで半年余り。過去最多の賛成をてこに、決議内容を一日も早く実現する行動力やスピード感が要となる。

(2009年10月31日朝刊掲載)

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