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社説・コラム

『ひと・とき』 元ひろしま美術館学芸部長 森川紘一郎さん

ピカソの思いを酌む

 「親しい女性や身の回りの物…。ピカソは自身の身辺を多く描いた画家だった」。広島市内の美術館3館が開いている合同展「アート・アーチ・ひろしま2013」。会場の一つ、広島県立美術館(中区)であった講演で語った。

 同館では、ピカソの大作「ゲルニカ」を原画とするタピスリー(群馬県立近代美術館蔵)を展示している。1937年、母国スペインの小都市ゲルニカがドイツ軍に爆撃された悲劇を描く。「身近な街が焼かれたことに反応した作品。描かれたアイコン(画像)にはそれぞれ意味がある」

 雄牛は暴力、死んだ子どもを抱える女性や鳴き叫ぶ馬は弱き者を表すという。一方、折れた剣に咲く花、太陽の中にともるランプは救い。「時空を超え、ピカソが託そうとした情報を酌み取ってほしい」

 「ゲルニカ」のタピスリーの展示は9月1日まで。同展は3館とも10月14日まで。(林淳一郎)

(2013年8月23日朝刊掲載)

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