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社説・コラム

社説 問われる国会 まだ夏休み気分なのか

 秋に入り、世の中の動きが慌ただしい。シリア情勢からは目が離せない。福島第1原発の汚染水問題も気掛かりである。

 国会に目を転じれば選挙制度改革が棚上げのままだ。懸案が山積する割に与野党の動きが鈍いのはいかがなものか。特に参院選で敗北した党は、いまだ立ち直れないように見える。

 いつまでも夏休み気分は困る。臨時国会召集は10月中旬以降という。それまでの間、国会議員が手をこまねくのは許されない。閉会中でも立法府の責任をしっかり果たすべきだ。

 まずは与野党協議で前に進めるべきは進めてもらいたい。

 先週、3月末時点の住民基本台帳人口が公表された。衆院小選挙区の「1票の格差」でみれば、またも9選挙区で2倍を超えたのは決して見過ごせない。

 昨年12月の衆院選をめぐっては2倍以上の格差に高裁段階で違憲判決が続いた。その状況は6月の公選法改正で脱したはずだったが、再び放置できない事態に陥ったといえる。小手先の修正ではなく、抜本的な選挙制度改革は待ったなしである。

 これまでの見直し協議は与野党の思惑が絡み合い、迷走を繰り返してきた。もはや安倍晋三首相が口にしたように第三者機関に委ねるしかあるまい。

 自民党と公明党はとりあえず民主党に幹事長会談で呼び掛ける方針と聞くが、他の野党も議論に加えて具体的な設置方法を早急に話し合い、国会としてのやる気を示す必要がある。

 国会に関しては、もう一つのテーマも避けて通れまい。審議の在り方の見直しである。

 首相や閣僚の委員会出席を減らす。施政方針演説や所信表明を衆参で一本化する。そんな案が与党側にあるようだ。審議の効率化で、とりわけ首相は政策判断や外交活動の時間をじっくり取れる、との声は以前から聞く。うなずける面はあろう。

 一方で野党が追及する場面は減ってくる。ねじれ国会を解消した安倍政権が単に手を抜きたいのなら困る。そもそも与党側から改革を強行する筋合いのものでもない。国会のチェック機能をどう確保するのか与野党で知恵を出し合う必要がある。

 そのためにも国会を常時開会とする「通年国会化」は検討の余地があるはずだ。閉会間際に与野党が対立し、審議拒否などで急ぐべき法案が簡単に廃案となることもなくなる。

 先取りする意味でも、臨時国会を前に各委員会の閉会中審査を積極的に行いたい。米軍がシリアを攻撃した場合、どんな姿勢を示すのか。交渉が難航する環太平洋連携協定(TPP)の感触はどうか。消費税増税の行方は。政府の説明を聞き、論じたいテーマはいくらでもある。

 福島の汚染水問題もその一つのはずだ。衆院の委員会では閉会中審査の動きがあったが見送られたという。東京五輪招致への影響を心配したふしがある。こうした「逃げ」の姿勢が続けば政権への信頼は損なわれる。

 野党の責任も重い。だが民主党は内部の不協和音の沈静化に懸命で、安倍政権とどう向き合うか腰が据わらない。日本維新の会などには政界再編を求める声もあるが、現時点では政策そっちのけの感もある。次の国政選挙まで3年と、のんびり構えているなら甘過ぎよう。与野党の勝負はまさに「今」である。

(2013年9月3日朝刊掲載)

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