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社説・コラム

社説 シリアの化学兵器 国際管理・廃棄へ結束を

 シリアの化学兵器を国際管理によって廃棄させる方向へ、各国が歩調を合わせ始めた。

 ロシアの提案を、オバマ米大統領が一定に評価。外交解決を優先させると、国民に向けて演説した。武力行使容認を求める決議案は採決を先送りさせた。軍事介入という事態が当面回避されるのは歓迎できる。

 実現すれば、国際社会が軍事力によらず化学兵器を封じ込める画期的なケースとなろう。ぜひとも合意し、実行に移してもらいたい。

 20カ国・地域(G20)首脳会合は、軍事介入を主張する米国と、阻止したいロシアの思惑が衝突し、決裂していた。その後、両国首脳の歩み寄りから、事態が好転した意味は大きい。

 米国は化学兵器使用をシリア政権側によるものと断定し、軍事介入を表明した。ところが英国が追随しなかったうえ、米国内でも反対論が強い。ロシア提案に救われた面もあるようだ。

 しかしプーチン大統領がシリア擁護に固執し、提案を時間稼ぎに終わらせるようでは台無しとなる。真に外交解決を目指す決意があるのか。本気度を世界が注視している。

 シリアの大統領もロシア提案の受け入れを表明した。化学兵器禁止条約に参加する意向も見せており、前進を期待したい。

 フランスが早速、国連安全保障理事会にかける決議草案を示した。シリアに国連査察の完全受け入れなどを求める内容と伝えられる。応じなければ、国連憲章7章に基づき武力行使を容認するとしている。

 これにロシアが反発した。米仏による武力行使の放棄が先だと主張する。だが、入り口のつばぜり合いで時間を浪費するのは不毛だ。米仏には軍事介入の選択肢をいったん凍結することを求めたい。

 ただ、国際管理下に置いて廃棄させるといっても、容易ではない。一体、誰がどう進めるのか。具体的な道筋は示されていない。まずは生産や保有の実態を明らかにするよう、シリアへの圧力を強めねばならない。

 そのためにも各国は思惑を捨てて結束し、この問題について断固とした姿勢をシリアに示す必要がある。そのうえで早急に実効性ある手段を練るべきだ。

 化学兵器管理の一方、使用した「犯人」の特定も忘れてはならない。子どもを含む民間人にも死傷者を出した。近くまとまる国連調査団の報告を受け、徹底した追及が求められる。

 内戦による死者は10万人を超えている。にもかかわらず、解決の糸口さえ見いだせていないのが実情だ。化学兵器に対する結束を機に、一日も早い内戦終結へとつなげたい。

 加えて今回の事案を外交解決のモデルとして生かせないか。

 というのも、これまで国際的な対立には、米国が軍事介入するケースが多かった。だが解決に至らないばかりか、問題を悪化させてきた。外交的なアプローチこそ、真の解決策という認識に転換するときだろう。

 核開発を進めているとして米国が敵視するイランにも、今回の手法で放棄を促したい。

 さらに中東和平実現には、紛争が続く要因であるイスラエルの核疑惑にも、迫っていく必要がある。もちろん中東ばかりではない。北朝鮮に対しても、有効に機能しうるに違いない。

(2013年9月13日朝刊掲載)

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