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社説・コラム

『聞かせて』 「りす会山口」代表 金子寿徳さん

写真洗浄ボランティア

被災地復興 足掛かりに

 2011年3月の東日本大震災や、県内を襲った7月末の記録的豪雨で泥水に漬かった写真を洗い、損傷を食い止めるボランティア団体「りす会山口」が周南市を拠点に活動している。代表の金子寿徳さん(48)に活動の成果や今後の課題を聞いた。(柳岡美緒)

 ―どんな活動をしていますか。
 毎週末に1回、周南市の市徳山社会福祉センターにブログで募ったボランティアら約20人が集まり、「あらいぐま作戦」と呼ぶ写真洗浄をしている。被災地の自治体などから預かったアルバムから写真を取り出し、スキャナーでデータ化して保存。洗える写真とそれ以外を分類した後、水に漬けたり拭いたりして汚れを落とす。泥水でぬれた写真を放っておくとバクテリアが繁殖してカビが生える。インクが溶け出して、画像が見えなくなることもある。

 ―活動を始めたきっかけは。
 2011年10月、仙台市出身の周南市の男性が東日本大震災を機に会を立ち上げた。男性が県外へ転勤した後もメンバー約10人が中心になって活動を続けている。大震災の写真はアルバム約350冊の約2万8千点を洗って返した。いまは7月末に記録的豪雨に見舞われた山口市と萩市から集まった写真を優先的に洗っている。8月17日から作業を始め、アルバム約150冊を預かっている。

 ―なぜ写真洗浄に取り組むのですか。
 被災者は家屋が損壊するなど、生活を立て直すのが精いっぱい。写真の洗浄まで手が回らない人が多いが、写真は人生の節目を記録した貴重な資料。人生の土台を取り戻してもらい、復興の足掛かりにしてほしい。写真洗浄は体力的、金銭的に被災地に行けない人でも活動できる。遠くは鹿児島県や京都府から参加した人もいる。

 ―どんなことに気を付けていますか。
 どれも自分の写真だと思って丁寧に取り扱っている。初めて参加するボランティアには最初に説明する。写真は所有者の大切な思い出であると同時に貴重な個人情報。取り扱いには責任が伴う。紛失しないようラベルを貼るなど、注意を払っている。

 ―課題は。
 毎年、大震災があった3月11日前後は参加するボランティアが増えるが、その時期を過ぎると関心が薄れる。参加者が減る秋こそ、積極的に参加を呼び掛けたい。毎週末の活動を続けることが、被災地を忘れないことにつながる。

かねこ・ひさのり
 1964年、山口市阿東生まれ。県職員として働きながら、2011年11月から「りす会山口」に参加している。同会を設立して初代代表を務めた周南市の男性が転勤したため、12年3月に代表に就任した。

(2013年10月9日朝刊掲載)

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