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社説・コラム

天風録 「舌」好調

 絶好調というより「舌」好調、と呼んでみたくなる。安倍晋三首相の発言が勢いに乗っている。「アベノミクスは買いだ」と胸を張った弾みなのか、女性の登用が経済成長の鍵だとする造語「ウィメノミクス」まで▲原発の汚染水問題はけむに巻き、東京五輪を手繰り寄せた弁舌に自信を深めているのかもしれない。ここにきて「積極的平和主義」なる旗を盛んに振り始めた。ツーカーであるはずの公明党の山口那津男代表もいぶかっている▲集団的自衛権の行使容認という、首相の思い入れたっぷりの裏地が透けて見えるのだろう。週明けに幕が開く臨時国会で、まな板に載せられても不思議ではない。影の薄い野党には久々に腕が鳴る議員もいよう▲ことしのノーベル平和賞と目されたパキスタンの少女マララさんには持論がある。「無学や貧困、テロリズムと闘いましょう。本を手にペンを握って」。これこそ平和学でいう、もともとの積極的平和主義にほかならない▲戦争がなくても心安らかとはいえない―。大震災から2年7カ月をきのう迎えた被災地の偽らざる思いでもあろう。この世の平和を築くために学ぶ必要は、政治家を選ぶ私たちの側にもある。

(2013年10月12日朝刊掲載)

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