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チベット暴動 広島から沈静化の願い 被爆地の声伝えよう 中国政府は対話を

■記者 石川昌義

 中国チベット自治区ラサの大規模暴動に対し、広島県内で沈静化を願う声が相次いでいる。2006年11月に被爆地ヒロシマを訪れたチベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世の非暴力思想に触れた人々は「対話こそ対立解決の道」と訴えている。

 ラサとインドなどのチベット難民の居住区を訪れた廿日市市の登山家西田正生さん(40)は、広島市中区で3月26日あったチベット情勢の沈静化を願う平和行進に参加。「今後も具体的な行動を起こし、衝突を止めよう」と被爆地の市民に賛同を求める。「原爆という暴力を経験した街のメッセージは世界に伝わる」と信じる。

 ダライ・ラマ師が6日間滞在した大聖院(廿日市市宮島町)の吉田正裕座主(47)は「彼は非暴力主義者。過激な行動は望んでいないはず。師が呼び掛ける対話の席に中国政府もついてほしい」と願う。5月には犠牲者の追悼法要を営む。

 中国政府が報道機関のラサへの立ち入りを制限する中、チベット難民を支援する県北部の浄土真宗僧侶(59)は、ダライ・ラマ師の拠点インド・ダラムサラ在住の知人から電子メールを受けた。

 「携帯電話で撮影したラサの映像が地元の寺で上映され、多数の遺体の映像にすすり泣きが漏れた、との内容だった」と僧侶。「中国政府が隠しても、情報の流れは止められない」と言い切る。

 ダライ・ラマ師は06年11月に広島市であった国際平和会議で、南アフリカのアパルトヘイト撤廃運動指導者デズモンド・ツツ名誉大主教や、北アイルランド出身の平和運動家ベティ・ウィリアムズ氏と対話。共同宣言で「他者の痛みに無関心であることをやめよう」と発した。

 会議を企画した広島青年会議所の元理事長中村一朗さん(39)=広島市西区=は「『和解と許しが暴力の連鎖を断つ』との訴えの実効性が問われている。チベットの現状を人ごとと思わず、何ができるかを考え続けたい」と話している。

チベット問題

 チベットを領土宣言した中国政府が1951年、人民解放軍の進駐を開始。チベット仏教の最高指導者ダライ・ラマ14世は59年にインドへ亡命した。65年のチベット自治区成立後も、独立を求めるチベット民族のデモが頻発。背景には宗教弾圧や流入する漢民族との経済格差がある。今回の事態は、中国のチベット政策に抗議するラサの僧侶と中国治安部隊が衝突。周辺の四川省や甘粛省でも衝突が起こっている。

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